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鈴の気持ち。
これほど愛されたことも、大切にされたことも、なかったのだ。
家族の愛には恵まれていたけれど、今、天堂が与えてくれるような、恋人としての愛情は今まで与えられていなかったのだから。
だから、とても嬉しかった。
幸せだと思った。
その気持ちが伝わればいい、伝わってほしい、と。
「……鈴」
天堂の声が聞こえた。鈴の名前を呼んでくれる。
その声に、鈴の胸の痛みは少しやわらいだ。
天堂の声がやわらかくなっていたことも手伝って。
天堂の手が動いた。鈴の頭に触れる。
止まっていた手が、もう一度、鈴の髪を撫でてくれた。
「……厄介だろう。迷惑もかけるかもしれん。だが」
天堂は少し言葉を切って、でもはっきりと言い切った。
「俺と、これからもいてくれ」
今度は痛みがやわらぐどころではなかった。
熱い感情が、鈴の中で爆発する。
こんなこと、言ってもらえるなんて。幸せすぎるだろう。
「もちろんです」
鈴はすぐに答えていた。
返事なんて決まっている。それを伝えたい。
天堂は鈴の答えに、ほっとしてくれたらしい。力を抜いた。
鈴の体を少し離す。
鈴の顔も上げさせて、自分の視線と合わせてきた。
その目を見て、鈴は心からほっとした。
自分の返事は間違っていなかったのだ。
だって、天堂の目は普段と同じ……いや。
普段よりずっと、優しく、慈しむような色になってくれていたのだから。