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 鈴は、はっとした。
 真夏の折り、外であれだけはしゃいで汗をかいている。それも少なくない。
 それを見られようなど。
 においだって伝わってしまうはず。体もべたついているかもしれない。
 そんなところへ。
「かまわん」
 なのに天堂はしれっと言って、鈴の体に触れはじめる。はじめから胸を掴んできた。
 大きな手で鈴の胸を包み込み、やわやわ揉む。
 鈴はこんな体の状態でこういう行為に突入された抵抗感からもがくけれど、こんなところを触られてしまえば弱い。元々、逃げ出すことなどできないとはいえ。
 天堂の手が触れるたびに、ぞくっとしてしまう。体の奥からなにか、湧き上がってきそうなのだ。
 天堂に抱かれるのももう、だいぶ慣れた。何度もしているのだから。今では自室で1人で寝る夜と、天堂のこのベッドルームに招かれるのと、どちらが多いか。
 でもこんな状況は初めてだ。
 帰ってすぐであるのも、こんな強引であるのも。
 天堂の手は鈴の背中に回った。ぷつんと下着が外される。
「や……っ」
 胸が晒されてしまって、羞恥に顔が燃えた。
 昼間からこんなこと、したことなどないし、それゆえの恥ずかしさもある。
 部屋はカーテンを引かれているから暗いけれど、外は明るいのだ。覗かれる心配がなくたって、背徳感が起こってしまう。
 天堂の手は鈴の素肌の胸を掴み、やわやわ刺激していった。
 揉んで、撫でて……そして先端へと触れた。
 もうすっかり慣れているのだ。びりっと強い快感が起こって鈴の体を跳ねさせた。
「はぁ……っ!」
 鈴の体にスイッチが入ったことを知ったのだろう。天堂はここでやっと、笑みのようなものを見せてくれた。
 それは純粋な愛おしさとか、そういうものではなかっただろうけど。
 次に鈴の胸に顔を下ろして、さっき触れてきた胸の先にくちびるで触れはじめた。
 刺激がさらに強くなって、鈴は荒い息と声を出しながら、天堂の背中を握って、なんとか耐えた。
 その中で思った。
 本当に食べられている、と。
 胸だけではない。
 この体が全部。
 いや、きっと体だけでもなく、もっとたくさん……。
 そう、鈴の心の奥までも。
 食べつくされてしまいそう。
 天堂の行為が進んでいく間にもその感覚は広がっていって、やがて、最後に弾けた。
 とろんとしてしまったその終わりは、体への快楽も確かにあった。
 でもきっとそれより強かったのは。
 愛するひとにすべて食べられてしまった、心への快楽、だっただろう。

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