バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

2

「そうか。1日くらい構わん。どこかで食ってくる」
「すみません。お願いします」
 天堂はあっさりと許可をくれ、鈴は小さく謝っておいた。仕事をできないのは確かなのだから。
「で? どのくらいひとが来るんだ」
 天堂が次に言ったのは、何故かそんなこと。
 どこへ行くのかとか、どうやって行くのかとか、そういうことではない。つまり、参加者が気になっているらしい。
「会社全体なんです。だからかなり大規模で……」
 鈴は本当のことを何気なく答えたのだけど。
 天堂は顔をしかめた。鈴はその意味がわからなくて、首をかしげてしまう。
「そうか。変な男と過ごすなよ」
 でも答えはすぐに明かされた。
 変な男!?
 鈴は目を丸くしてしまう。
 そのあと、顔が熱くなってきた。そんな心配を。
「そ、そんな、変なひとなんていませんよ」
「そうじゃない」
 そう言った鈴だったが、ぐいっと腕が引かれた。勢いが良すぎて、天堂の座るソファに膝がつく形になる。
 鈴をそうしておいて、腰に腕を回してきて、天堂は鈴の身を、ぐっと抱き寄せた。
「変な男に言い寄られるなと言っているんだ」
 間近になって、天堂の声量も小さくなる。どこか甘いような……鈴だけに聞こえるような声。
 その声もそうであるし、内容も問題だった。
「え、えええ……? そ、そんなのもっとないですよ!」
 あわあわ言ってしまった。
 自分に言い寄るなんて。
 今までなかったのに、急にそんなこと、ないだろう。あるわけがない。
 でも天堂は眉を寄せた。
「絶対にないと言えるのか」
 言われて鈴は詰まってしまう。
「そ、それは……」
 絶対にない、とは言い切れない。
 そんな、可能性くらいはあるのだから。
 起こらないとは思えども、絶対に、と言われると……。

しおり