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「そうか。1日くらい構わん。どこかで食ってくる」
「すみません。お願いします」
天堂はあっさりと許可をくれ、鈴は小さく謝っておいた。仕事をできないのは確かなのだから。
「で? どのくらいひとが来るんだ」
天堂が次に言ったのは、何故かそんなこと。
どこへ行くのかとか、どうやって行くのかとか、そういうことではない。つまり、参加者が気になっているらしい。
「会社全体なんです。だからかなり大規模で……」
鈴は本当のことを何気なく答えたのだけど。
天堂は顔をしかめた。鈴はその意味がわからなくて、首をかしげてしまう。
「そうか。変な男と過ごすなよ」
でも答えはすぐに明かされた。
変な男!?
鈴は目を丸くしてしまう。
そのあと、顔が熱くなってきた。そんな心配を。
「そ、そんな、変なひとなんていませんよ」
「そうじゃない」
そう言った鈴だったが、ぐいっと腕が引かれた。勢いが良すぎて、天堂の座るソファに膝がつく形になる。
鈴をそうしておいて、腰に腕を回してきて、天堂は鈴の身を、ぐっと抱き寄せた。
「変な男に言い寄られるなと言っているんだ」
間近になって、天堂の声量も小さくなる。どこか甘いような……鈴だけに聞こえるような声。
その声もそうであるし、内容も問題だった。
「え、えええ……? そ、そんなのもっとないですよ!」
あわあわ言ってしまった。
自分に言い寄るなんて。
今までなかったのに、急にそんなこと、ないだろう。あるわけがない。
でも天堂は眉を寄せた。
「絶対にないと言えるのか」
言われて鈴は詰まってしまう。
「そ、それは……」
絶対にない、とは言い切れない。
そんな、可能性くらいはあるのだから。
起こらないとは思えども、絶対に、と言われると……。