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「……わぁ」
与えられた部屋はとても広かった。鈴の1人で暮らすマンションの居室とは比べ物にならない。
1人で、しかも家の中の一部で過ごすだけの部屋にしては、じゅうぶんすぎる。8畳はあるだろう。
こんな広くて、素敵な部屋。持て余してしまいそうなくらい。
鈴は初めて荷物を手に、入ったとき恐縮してしまったくらいだ。
おまけに内装はなかなかかわいらしかった。
窓にかかっているカーテンは生成り色で、レースがついている。
家具もどう見ても安いものではない。デスク、椅子、おまけに小さめだがソファまで。
同じ生成り色で統一されていて、明るい雰囲気。
……これ、元々あったのかな……。
そんなふうに思ってしまったのは、天堂が独り暮らしで、特に彼女などを招いている気配が今のところなかったからだ。
そもそも彼女か、もしくは婚約などしている女性がいるなら、鈴を料理代行家政婦としてなど雇わなかっただろう。ややこしいことになるだろうから。
「適当に手配してみたが、気に入ったか」
うしろから天堂がやってきて、中を覗いて言ってくれたこと。
やはり鈴のために用意してくれたのだ。
本当に優しいひと。転がり込んだも同然なのに、ここまで。
鈴は感動すら覚えてしまった。
「は、はい! 勿体ないくらいです!」
「勿体ないものか。俺の家に住むんだ、安い内装など許さん」
鈴の言葉に天堂はきっぱり言い切った。
あ、なるほど、そういう理由。
鈴は思ったものの、この部屋がそういう理由であれ、作ってもらえたという事実は変わりない。
「じゃ、適当に片付けたら夕飯を作れ」
「はい!」
ご飯を作るという条件で住まわせてもらうのだから、自分の仕事もちゃんとしないと。
鈴は決意を新たにした。
そこで、はたとする。
自分がここに住まわせてもらうとしたら……。
「あ、あの」
そろそろと口を開いた。天堂は少し眉を寄せて「なんだ」と言う。
「あの……私のぶんも、一緒に……ですか?」