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第九十五話

渡辺アミとは、東京駅前でのあの日以降、何度も連絡がきていた。


その度に無視を決め込んでいたのだが、俺の手掛ける番組のコメンテーターの中では秀逸な意見を出すため、プロデューサー復帰後は彼女を登用した。


そのせいか、局でよく声を掛けられる。


仕事場で言葉を交わすことはあっても、数年前のようなプライベートの付き合いはもう一切なくなった。


もっとも、彼女の方はまだ諦めていないようだが。


以前よりも多忙な日々を送っており、前の職場よりも休日はずいぶん減ったが、合間を縫っては和歌のことを調べていた。


図書館に行っては精霊や水神様の民俗信仰について書かれた文献を漁り、有名な呉服屋を訪ねては彼女が着ていた着物について話を聞いて回ったが、俺の求めていた情報は得られなかった。


局のカフェテリアで仕事をしている時、ふと窓から金木犀の香りがした気がして、パソコンの検索画面に『金木犀』と入力してみたことがあった。


ネットページには金木犀の生息地や開花時期等、写真と併せてアップされていたが、羅列された文字の中からまっさきに目に飛び込んできた言葉に、思わず苦笑せざるを得なかった。






「花言葉は………………初恋……」

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