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第五十五話

「そこでは……なあに?」


さっきの小鳥のような仕草だな。


君もあの青い鳥のようにどこかへ行ってしまうのか。


「……そこでは、俺は動画の企画・制作を担当していてな。スタッフの演技指導なんかもさせてもらっている。

撮影は勿論、編集まで俺がやっている」


「そう、それでカメラが趣味なのね?」


「いや、これは…………」


——映したいものが映せないから。


俺がカメラを始めたのは2年前。


丁度、テレビ局をクビになった頃だ。


解雇通告を言い渡されたその日に俺は荷物をまとめることになったのだが、如何せん気持ちが荒れていたから、荷物は全てクローゼットに突っ込んでおいたのだ。


ボロいAV事務所に就職してから俺はどんどん心がすさみ、ようやく局の荷物を引っ張り出したのはマンションを引き払う準備をする時だった。


荷物を断捨離するため一番手前にあった箱を開けると、中にはデジタル式一眼レフカメラが丁寧に収納されていた。


「両親がくれたんだ。テレビ局から内定が出たその日に。

……『カメラマンになるわけじゃないから、それは必要ない』と俺は言ったんだが、両親は『絶対に必要になるから』と言ってプレゼントしてくれたんだ。

案の定、局でカメラは一度も使わなかった。

でも両親には本当に感謝しているよ。

……本当に必要な時は、今だと思うから」

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