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 無事に下山すると話を聞いて解散となる。
周りを見ると何人かの人は、カップルが成立していた。
 まぁ、何とも羨ましい。
すると近くで話し声が聞こえてきた。

「あそこのカップル。男性におぶってもらえて羨ましいよねぇ~」

「男性……顔怖いけど優しいよね。
いいなぁ~あのカップル」

 なんかおぶられた事で周りに勘違いされてしまったらしい。いえいえ……違いますから!
 断じて違いますから。あくまでも元上司と部下です。
鬼課長が彼氏とかやめてほしい。
 こんな脅してくる人が恋人だったら私の身が持ちませんから……。
 ビクビクしながら課長の横で担当スタッフの話を聞いていた。

「宮下」

「は、はい!」

「さっきから震えているが寒いのか?
もう少しだから我慢しろ。後で車でエアコンをつけて温かくしてやるから」

「あ、ありがとうございます」

 震えている意味が全く違いますが……。
話が終わりやっと解散となった。
 疲れた……いろんな意味で。
あぁ、本来なら真っ直ぐ帰ってお風呂に入って寝たいのに。

 しかし私は、この後も課長と食事という名の反省会をしないとならないのね。
 まるで接待を強要された気分だわ。帰りたい。
 担当スタッフの話が終わり解散したのだが課長は、またおんぶしようとする。私は、慌てて断った。

「擦りむいただけですので、ゆっくり歩いて下されば大丈夫です」

 さすがに道端でおぶられるのは、恥ずかしい。
山登りと違い少しぐらい痛いのは、我慢出来る。
 あまり大げさにしてほしくなかった。

「……そうか」

 そう言った課長の表情が少し残念そうに見えたのは、気のせいだろうか?

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