バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第四十五話

普通、女と外出する際はいつも以上に気を遣うようにしている。


俺と過ごす時間が心地良いものであって欲しいと思うからだ。


だが今回の行為は思慮に欠けている。


完全にアウトだ。


彼女の開いたままの口がそれを証明している。


「和歌……いや和歌さん、あの……、申し訳ありません。軽率でした」


俺の言葉ではっと我に返ったらしい。


彼女はぶんぶんと頭を振って否定した。


「い、いえ! そそ、そんなこと、ないですっ!」


森林の冷涼なマイナスイオンが浴び放題にもかかわらず、手で顔を仰いでいる。


首元まで真っ赤にした彼女が可愛らしい。


彼女には申し訳ないが、恥じらう姿を見れたことに心でガッツポーズをする自分がいる。


「もう……ウィルソンさん…………」


顔を両手で隠し俯く彼女。


そのまま黙り込み、肩を震わせている。


彼女は否定したが、やはり俺の軽率な行動で傷つけてしまったのかもしれない。


先程までニヤけていたもう一人の俺は、水を打った様にしょんぼりしている。


「和歌さん……本当に、すみません」


刺激しないよう、遠慮がちに背中をさすった。


店主がカウンターからこちらを心配そうに見つめている。


あんな爺さんにまで心配をかけて、俺は何がしたいんだ。

しおり