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第四十二話

茶屋についた俺たちは、70歳くらいの店主に声を掛けて草団子と抹茶を2つずつ注文した。


ここは店の外でしか飲食が出来ないため、黒塗りされた木製の縁台へ彼女を座らせ、俺も腰かける。


(……ちょっと待て。何故俺は隣に座ったんだ。真向いにも縁台はあるんだぞ)


さも当然のように隣へ座ってしまったことで彼女が気を悪くしていないか気になり、チラリと顔色を伺う。


彼女は何故か瞑想しているが、これは大丈夫だと判断していいのだろうか。


「和歌さ——っ!」




最後まで喋ることが出来なかった。


彼女が人差し指を俺の唇へそっと押し当ててきたからだ。


密着する程近くには座っていないはずなのに、どうしてだろうか。


至近距離からじっとこちらを見つめられているように感じる。


さっきから左胸で主張する心臓が煩い。


俺は柄にもなく顔を赤らめてしまった。


「しーっ。……ほらっ、聞こえませんか?」


彼女はもう一度瞳を閉じ、耳に両手を当てて何かを聞き取ろうとしている。


伸びた鼻の下を隠したくて、俺も同じように周囲の音に聞き耳を立てた。




——チュルル。ヒィ。


この鳴き声は……。

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