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男と女のちょめちょめ事情 その3

 とりあえず、ツメバとクローコさんによる不倫疑惑が晴れたもんですから、チュンチュはさっきまでとはうって変わって可愛い顔でツメバに抱きついています。
「ツメバ様ぁ、チュンチュは最初から信じていたのですよぉ」
 その言葉に、室内にいた僕・ブリリアン・クローコさんの三人は一斉に首を左右に振っていきました。
 それはもう激しく。
「あぁ!?」
 そんな僕達をチュンチュが般若の表情で睨み付けてきました。
 その表情を前に、室内にいた僕・ブリリアン・クローコさんの三人は一斉に首を縦に振っていきました。
 それはもう必死に。

「あの~そろそろ」
「お話いいでしょうか~」
 そんな僕に、ナイスタイミングで魔女信用金庫の単眼族ポリロナと巨人族のマリライアがポージングを決めながら声をかけてくれました。
「あぁ、うん、お願いします」

 と、いうわけで、ようやく僕達はこの世界ではトップクラスでお金の事に詳しいはずの魔女信用金庫の二人に
「かくかくしかじかでして……」
「ほうほうかくかくしかじかですか~」
「なるほど~かくかくしかじかなのですね~」
 と説明をしていきました。

 で、ポリロナとマリライアは、僕の話を聞くと、何やらひそひそ話を始めたのですが……なんかですね、そのヒソヒソ話……ところどころで声が妙に大きくんなってる気がするんですよね。
 で、気をつけて聞いていると、

「……で、やっぱりこの相談にのるには給料振込をごにょごにょ……」
「……ついでに家賃の引き落としもごにょごにょ……」

 ……あ~……
 なんかありますよねこういうのって……銀行もノルマとかきついって聞いた事ありますしね。
 で、しばらくその二人を見てますと、徐々にこの二人ってば露骨に僕の方をチラチラ見始めたんですよね。
 で、僕は相変わらずチュンチュに抱きつかれているツメバへ視線を向けました。
「ツメバ」
「あ、はい、なんでしょう店長」
「とりあえず、魔女信用金庫で口座を開せ……」
「はいはいはいこれが口座開設申込書になります~」
「はいはいはいペンはこちらに、サインはここですよ~」
 僕の言葉の途中で割り込んできたポリロナとマリライアは、僕を押しのけながらツメバの前に陣取っていきまして、文字通り手取り足取りしながら書類に記入をさせ始めました。

 ……で

 とりあえず、ツメバが新規口座を開設して家賃と公共料金の引き落とし手続きをしたところで満足したらしいポリロナとマリライアは、ニッコリ笑顔で僕に振り向いてきました。
「じゃあタクラ店長さん」
「さっそく行きましょうか」
「え? どこへ?」
 困惑する僕の前で、よっこいしょと立ち上がったポリロナとマリライアは、笑顔で魔法陣を展開し始めました。
 すると、でっかい魔法陣が二人の前に出来まして、ポリロナがその中央を開いていきました。
 よく見ると、魔法陣の向こうになにやら建物の中の一室の扉が出現しています。
 で、魔法陣をくぐったポリロナとマリライアはですね
「失礼しま~す」
「魔女信用金庫の者で~す」
 元気な声でそう言いながら部屋の中に入って行きました。
 すると……その部屋の奥に、あの黒づくめの女がいるではありませんか。
 で、いきなり僕らが登場したもんですから、黒づくめの女は慌てふためいています。
「な、なんでここがわかったのさ!?」
「そりゃ、あなたの街のあなたのお財布がモットーの」
「魔女信用金庫ですからね~」
「「悪徳業者の情報くらいまるっとおみとお……
「まって、それ以上はいけない」
「え~?」
「決め台詞ですよ~?」
 不平不満たっらたらのポリロナとマリライアをなんとかなだめた僕は、ようやく本題に入りました。

「で、あなた……」
「はぁ、あんた達に名乗る名前なんてないっての」
「闇の嬌声の下部組織「闇の嬌声の足の爪」の女首領のジルルさんですね~」
「ちなみに組織はあなた一人で、部下のゴーレムは全部あなたが召喚した物ですね~」
「な!? なんでアタシのことをそこまで正確に知ってるのよ!?」
「そりゃ、あなたの街のあなたのお財布がモットーの」
「魔女信用金庫ですからね~」
「「悪徳業者の情報くらいまるっとおみとお……
「だからそれ以上はいけないと!」
 再び決め台詞を僕に阻止され、不満たらたらなポリロナとマリライアですけど、とにもかくにも正体のわかった闇の嬌声の下部組織闇、闇の嬌声の足の爪の女首領ジルルに向き直ると、
「はい、質問です」
「な、何よ……」
「あなた、ツメバさんにポルーナに関する違法な代金を請求し、なおかつその代金に対し法定金利を超えた過剰利息を支払わせましたね?」
「な、何言ってんのよ……こ、こういうのはだな、一回でも支払ったら債務を認めたってことになってだな……」
「では、ポルーナの代金を正式に規定してある書類を提示願えますか~?」
「え?」
「ポルーナのレンタルには王都が定めた運用規定がありますよね~? それに上限利用料の規定も定められているのは、もちろんご存じですよね~?」
「え? あ……いや、その……」
「この上限利用料が制定されたのって~……

 と、まぁ、こんな感じで……えぇもうすごかったです。
 ジルルが何か言う度にですね、ポリロナとマリライアは、まるで立て板に水の勢いで淀みなくペラペラ言葉を発していきます。しかもそのことごとくが正論ど真ん中みたいなんですよね。
 この世界の金融事情に詳しくない僕なので、全てが正しいかどうかの判断は出来かねるのですが、ジルルが脂汗を流しながらタジタジになっていくのを見ているだけで、ポリロナとマリライアが間違っていないことがよくわかります。

 で、こんな感じで、ポリロナとマリライアはですね、3時間にわたってジルルを論破し続けたのですが……
「もういい……もういいから……もう取り立てに行かないから……お金も返すからもう勘弁してぇ」
 ジルルってば、とうとう半泣きになりながら、大声でそうわめきちらし出しました。
 ポリロナとマリライアは、そんなジルルにしっかり誓約書まで書かせてから、
「はいはいではでは」
「これにてバイならですわ~」
 そう言いながら和やかに笑顔を浮かべながらジルルの事務所の扉を閉めていきました。
 で、僕達が部屋を出ると、中からなんかすっごい衝撃音が聞こえ始めました。
「あ~……これ、机や椅子に八つ当たりしてるなぁ」
 僕は思わずそう呟いたんですが
「タクラ店長さん、もう用事は済んだのですから」
「とっとと帰りましょう」
 ポリロナとマリライアに急かされながら、僕達は二人の転移魔法でツメバの部屋へと戻っていきました。

◇◇

 と、まぁ、こうして今回の諸悪の根源だったツメバの借金問題も無事解決しました。
 で、これでお金も戻って来たので、ツメバは正式に奥さんのチュンチュを部屋に呼び寄せ、一緒に暮らすことにしました。
 荷物を運ぶためのポルーナですけど、ガタコンベの商店街組合のエレエにお願いして、僕達がこのあいだ借りたポルーナを貸してもらいました。
「奥さまを呼ばれるためでしたら、めでたいではないですか」
 エレエはそう言って、ポルーナを無料で貸してくれました。
 で、そのポルーナを使って、チュンチュは早速自分の家財道具をルシクコンベから持って来たわけです。
 で、ツメバはこうして、奥さんのチュンチュと一緒に暮らし始めることが出来たわけです、はい。

◇◇

「そんなことがあったのですね~」
 お風呂に入って、僕の膝の前に座りながら僕の話を聞いていたパラナミオは感心しきりといった表情をしています。
 僕的には「こんなこともあるから気をつけるんだよ」的なつもりで、今回の出来事を話したつもりだったんですけど、
「パラナミオ、わかったかな?」
 僕がそう聞くと、パラナミオは満面の笑みを浮かべながら
「はい! パパが格好良かったです」
 そう言いながら僕に向き直ると、そのまま抱きついてきました。

 まぁ、今はまだこんな感じでも……ね。
「はいはい、ありがとう」
 僕はそう言いながらパラナミオの頭を撫でました。
 すると、パラナミオは嬉しそうに笑顔を浮かべていきました。

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