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「あなたなんか、大っ嫌い!」
式典が終わり、小休憩中。
ルシールは、皇帝とはじめて会ったときを思い出していた。
私は、彼に初対面でそう言葉を、掛けてしまったことを後悔している。
そして、彼はそんな私に怒りを見せたりすることなく、むしろ戦争で傷ついた私を励ましてくれた。
…私にはもったいない方だわ。
どうして私に求婚しようと思ったのかはわからないけど、絶対私よりももっといい人がいるはず!
今日できっぱりはっきり断らないと!
「姫様、応接間でお客様がお待ちです」
「わかったわ」
侍従に呼ばれ、部屋に向かうと、既に父と母、そしてその向かい側には、皇帝が席について優雅にお茶を楽しんでいた。皇帝の傍には騎士が控えている。
こ、これはどういうこと…?
まるでお見合いみたいじゃない。
「あら、やっと来たわね。ルシール、こっちにいらっしゃい」
お母様は私に気づいてこちらに手招きする。
驚いて、なぜここに両親がいるのか尋ねるがはっきりとした答えは貰えなかった。
「お母様、お父様、どうしてこちらに?」
「嫌だわ。大事なお客様だもの、おもてなしするのは当たり前でしょう?」
「それはそうだけど…」
まさか、私のいないところで勝手に話を進めてないよね…?と二人をじとりと見つめると、お父様は居心地悪げに、さっさと退散しようと、私たちに声をかけた。
「まあまあ。ルシールが来たから私たちは退散しよう。あとは若い人たちで楽しんでくれ」
「そうね。2人の邪魔をするのも野暮だわ」
お母様も一緒に出て行くつもりのようで…まるで本当のお見合いみたいで、私は自身の警戒レベルを引き上げたのだった。
「ごゆっくり」と、両親が去ったあと、皇帝は人払いをした為、部屋は2人きりになってしまった。
…束の間沈黙が流れた後、皇帝から話を切り出した。
「ルシール殿、10年ぶりでしょうか。お久しぶりです」
「こちらこそ、再びお会いできて嬉しいですわ。皇帝陛下」
皇帝は無駄にキラキラとした笑顔で社交辞令を口にする。
私も負けじと挨拶を返すが、皇帝のキラキラパーフェクトスマイルには敵わない。
「姫君、今日は確認するためにきたのです」
皇帝はそう言って、席を立ち、私の隣に腰掛けた。