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私は当初、ヴィクトル・マクミランのことが大嫌いだった。

ルシールが12歳のとき、今は無き、当時の大帝国が世界征服を企み、北も南も、西にも東にも、あらゆる方面から兵を送り、戦争を仕掛けた。じわじわと、徐々に大帝国に侵食されていく恐怖に、私たちは震えていた。その中で、ただ自国を守るために兵を動かす国もあったが、ほとんどの国は、大帝国の出兵に乗じて、他国をも攻撃しはじめたのである。情報は混乱し、何が敵で、何が味方なのか、わからなくなっていた、そんな時、ヴィクトル・マクミラン率いる軍隊が圧倒的武力ですべてを制圧し、彼はわずか2年で世界大戦を終わらせた。

外部の情報が入って来ず、孤立していた私たちは、血塗れのヴィクトル・マクミランらを見た瞬間、死を予感した。
しかし、彼らはただ、私たちーー十分な武力を持たない弱き者らを救おうと尽力していたと知ったのは、両親が戦後処理の為、マクミラン帝国に行く際について行ったときである。
それまで、無知な私は愚かにも世界大戦の首謀者はヴィクトル・マクミランだと思い込み、恨んでさえいた。

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「姫様、出来ましたわ」

鏡を見てみると、戦闘態勢万全の私がいる。
いつもながら、リズのお化粧はすごい。

「ありがとう、リズ。…そろそろお客様が揃う頃ね、行きましょうか」

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