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73.プレゼンテーションパーティ?

 ちひろは社員全員に囲まれて、鳴り止まぬ拍手を受けていた。

「おめでとう。中杢さん」

「よくやったわね。見直したわ」

 手放しの賛辞が、次から次とちひろに投げかけられてくる。
 その場には逢坂もいて、みなと同じように拍手をし、嬉しそうに笑っていた。

 ちひろは照れた顔で、みんなに頭を下げまくる。

「ありがとうございます。本当にありがとうございます!」

 それでも拍手は鳴りやまない。

 ちひろは称賛の嵐を受け、嬉しさのあまり涙が出そうになった。
 というか、すでにもう泣いている。
 瞬きひとつで頬に流れ落ちそうなところまで、雫が目に溜まっていた。

 なぜ、ちひろがここまで賞賛されているかというと――
 逢坂が一歩前に出て、ちひろに向かって手を差し出した。

「まさか、大手インターネットショッピングモールのインナー部門で、君の企画開発した商品が年間MVPを取るとはな。正直入社してきたときは、ここまでのことがやれるとは思ってみなかった。すごいぞ」

 全社員の前で逢坂に公然と讃えられ、ちひろは感極まってしまう。

「あ、ありがとうございま……うっ……うぇ……」

 喜びが、胸から喉元にまでこみ上げてしまい、耐えきれなくなったちひろは号泣してしまう。

「おいおい。泣くことか」

「だって……」

 世間知らずで無知だったちひろが、賞を貰えるまでに成長したのだ。
 泣いてしまっても仕方がないというものだろう。

 ちひろは我慢できず、泣きたいだけ泣くことにした。

「うぇ……私、本当にダメで、みんなに迷惑かけて……」

「迷惑なんて、さほどかけられていないわよ。だってあなた、何もできないに等しかったじゃない。失敗するほど仕事を与えていなかったわ」

 橘がしらっとそう言うから、溢れ出た涙が引き潮のように目に戻って行く。


「それはそうですが……」

 みな一斉に笑い出す。
 逢坂も一緒になって笑うからどうしたものか。

 ちひろはわざとらしく咳払いをすると、全員に向かって感謝の意を述べた。

「そんなできの悪い私ですが、長い目で見守ってくださってありがとうございました」

 ぺこりと頭を下げると、拍手がよりいっそう激しくなる。
 ちひろひとりでヒット商品を作り上げることなどできない。
 いろんなひとたちの助言と手助けで、成し遂げることができた仕事だ。
 そう考えると、またしても滝のように涙をあふれ出させてしまう。

「本当に……ありがとうございました」

 橘が呆れたように、ちひろの肩をポンポンと叩く。

「そんなに泣かないでよ。そうだ、プレゼンテーションパーティにはあなたが行ってよね」

「プレゼンテーションパーティ?」

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