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10年も前のこと。
世界大戦が終わり、戦後処理の為、元・敵国のマクミラン帝国に向かう両親に、無理を言ってついて行った先で、当時帝国元帥だったヴィクトル・マクミランに会ったことがある。まだ21歳という若さで国の為に奔走した彼に、私はほのかな憧れを抱いて、故郷に帰っていった。

そして、現在。
午後のティータイムを楽しんでいる途中、慌てた伝令が部屋に飛び込んできた。
何事かと話を聞いてみると、一体どうしてそんな話があがったのか。
刹那、私は困惑した。
伝令によると、憧れの元・帝国元帥殿(現在は皇帝)から私に求婚の申し込みがあったらしい。
…らしいというのは、私はまだその手紙を見たわけではなく、伝令を通して伝えられたからである。
しかし、私が手紙を見ようと見まいと、この話は断らなければならない。
なぜなら、大国の皇帝と小国の姫では身分が違いすぎるからだ。

なんとか、やんわりとお断りする手紙を書かなければ…。

せっかくのティータイムなのに、お茶の味もわからなくなるほど、頭をフル回転させて、言葉を考えた。

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