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世代交代

「………………おや? 意外と早く処理したのですね」
 ある日のこと。れいがいつものようにハードゥスの管理をしていると、外の世界で捉えていた気配が一つ消失した。
「………………創造主はやり過ぎたということなのでしょうね。ですが代わりを創造するのではなく、分身体をその任に就けるのですか……まぁ、そこは私には関係の無い話ですね。それに今更な話ですし」
 元々外の世界は実質れいの本体が支配している世界であったが、異物の一つにして、世界を創造出来る力を持った存在でもあった創造主を取り除いたことで完全にれい本体の支配下に置かれたことになる。しかもそこに自身の分身を置いたことで盤石の体制となった。
 もっともれいにしてみれば、元から本体が実質の支配者であり、その頃から創造主など気にする必要なく好き勝手出来たのだから、それは今後も変わらないのだ。加えて言えば、そもそもれいでは本体に勝てないので、本体が何かしても異議申し立てをするのが精一杯。本体がその気であれば、分身体など手を一振りするまでもなく消滅させられるのだから。
 なので、創造主がどうなろうともれいには関係の無い話であった。
 まぁ、罰として制約を課すなどの方法で自重を促すなど、ろくに警告することなく処分したのにはれいも少々驚きはしたが。それだけ本体のれいを怒らせることを創造主はしたのだろう。ハードゥスのれいにとってはどうでもいい話だが。
「………………さて、それでは今日は保護区の整理から始めるとしますか。ハードゥスに適応出来たモノであれば、別の場所に移しても対抗出来るぐらいにはなっているでしょうからね」
 ハードゥスでは常に大量の力が通過している。それを感知するのは管理者側の者達以外はほぼ不可能だが、それでもしっかりと影響は受けている。最も解りやすいのが存在の強化だろう。
 これは単純に身体能力が向上したという実感しやすいものから、毒などに対する抵抗が増したという解りにくいものまで様々ではあるが、ただハードゥスに居るだけでその恩恵を受けることが出来る。
 特に世代を重ねたハードゥス生まれハードゥス育ちの者達は最初から適応している場合が多く、また許容量も多いということもよくあった。この辺りについては訊かれない限りは教えていないので、宗教によって様々な話が出来ている。もっとも、一部管理者側に尋ねて答えを知っている者達も存在するが。そこから創られた教えも多い。
 そうは言っても最も多いのは、そんなことになど全く感心がない者達だろう。何故かと言えば、これは膨大な力を受けてある日突然劇的に強くなるとかではなく、滲み込むようにかなりの長い時間を掛けて徐々に強くなっていくので、普通に成長したと認識されているから。
 そういった理由により、ハードゥスの在野種と新たに流れ込んだ種では強さに差がありすぎるという事態になっているのだ。
 人であれば戦いが全てではないので問題ないが、魔物や植物など直接的な弱肉強食を根幹としている世界では、ただ淘汰されるだけの存在となってしまう。
 そういうわけで創られたのが保護区で、ここでも影響の度合いによって区画分けされている。
 そこでしっかりと適応させてから、これなら外に出しても一方的に淘汰されるだけではないとれいが判断した場合は、保護区から外に出されるのだ。もっとも、一代で保護区から出られるのはかなり珍しいので、基本的には何世代か保護区で重ねていくことになるのだが。
 この保護区という処置は、それだけハードゥスも誕生してから長い年月が過ぎたという証明のようなものでもあるので、悪いモノではないだろう。
 今日はそこから、最終区画に入れている魔物と植物の幾つかを外の世界に移すつもりでいた。最近は漂着物の増加に伴い、保護区も手狭になってきたので、そろそろ新しい保護区を創る予定もある。
 れいは他にも、それ以外の区画に分けているモノ達の整理も行うつもりであった。主に区画の段階を上げることだが、たまに下げなければいけないモノも混じる。適応速度や許容範囲も個体次第ということだろう。
 その辺りが緩いのは海のモノ達だ。最初だけ大きな生け簀に入れられ、ある程度育ってからは保護区内の海に放流される。
 海のモノ達は適応が早いので、植物なども含めてサイクルが早かった。この辺りは海水の中で生きるモノということなのだろう。海水は地上や空中よりも力の濃度が濃い。
 力を多く含んでいるのは海の次は土なので、地上では植物が入れ替わりが早い。もしかしたら魔物達も土の中に入れてしまえば適応が早いのかもしれない。
「………………」
 それについて一瞬考えたれいだったが、止めておいた。今はまだ余裕があるのだから。
 そういうわけで、まずは保護区の在る島へと向かった。移転を終えたら、新たな保護区を何処かに増やそうと考えながら。

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