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58.売れるインナーを企画します

 とはいうものの。


 商品開発というものを初めてやってみたちひろは、開始早々壁にぶち当たった。

「企画書……ですか」

「そうだ。新規で商品を開発するには、まず企画書を立案する必要がある」

 逢坂の説明によると、まずは市場を調査し、商品のライフスタイルを研究する。
 そして価格帯や顧客層を分析し、商品企画を立てることが肝心だという。

「商品企画をするにあたって、最も重要視することはアイディアじゃない。マーケット調査だ。そのために君には、ライバル会社の商品をくまなくチェックするよう指示を出した。買いつけに連れて行ったのも同じ理由だ」

 突然降ってわいたような商品企画の話だったが、実のところかなり以前からやらせようとしていたのだと知る。

「過去にヒットした商品企画書を参考にして書けばいい。商品企画、楽しみにしているぞ」

 逢坂はそう言うと、過去の企画書を綴ったという一冊のファイルを手渡してきた。

「は、はい。頑張ります!」

 デスクに戻ると、早速ファイルを広げて、これまでの商品企画書に目を通す。

 最近のヒット商品は、胸を中央に寄せて上げる『谷間クッキリブラ』。
 背中のデコボコした肉を押さえ込む『振り向き美人ブラ』。

 これらのブラジャーは五十万枚以上売れた大ヒットアイテムで、より広いダーゲットを求めサイズ展開やカラー、デザインも豊富になったという経緯がある。

「……ブラかあ。私的には、貧乳を爆乳にしてくれる魔法のブラなんてあったら、すぐに買っちゃうんだけど」

 魔法なんてあるわけがない。
 せいぜいパッドを極厚にするくらいかと、乾いた笑いを漏らす。

 ショーツのヒットアイテムは、ブラジャーより多かった。
 ヒップラインが上向きになるショーツ。下腹押さえができるショーツなどは、ブラジャーより単価が低いからか八十万枚も売れている。

「コンセプト……は、『毎日穿きたいから、まとめ買い! カラバリもサイズも豊富』か。カラーもサイズ展開も多いだから、たくさん買っちゃうわけね」

 ちひろは、あれ? と大事なことに気がついた。

「てっきり主軸になるインナーは勝負用のセクシー路線かと思ったけど、売れているものはどれも実用路線なの?」

 ハイクラスブランドは単価が高く、客単価もそれなりに高いが、販売枚数は少ないと言っていた。
 逆にカジュアルブランドは単価がそれほど高くなく、若い客層が多いと言っていた。

 しかし実際に売れるのは、そのどちらでもない実用的な下着である。

「使い分けってことね。私が商品企画をするなら……」

 ちひろ自身が、欲しいと思えるインナーがいい。

 例えば勝負用下着。
 赤い薔薇のおじさまに、へそまで隠れているショーツを見られたのは、実にしくじったと思う。

 異性に見られるときは、色気があってセクシーな下着がいい。

「……でもなあ。彼氏のいない女代表の私からすると、いつそんな勝負シチュエーションになるのって感じ」

 勝負になるタイミングを予想できないなら、最初から勝負用兼普段用というのはどうだろうか。

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