バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

いつ出るか、出るかと思いながら、毎日、高級紙や大衆紙に眼を通すが、特に記事は出なかった。

心配したアレックスからは護衛を増やす、と連絡があったが真理はそれを断った。

ここが王子の私邸であることは、このあたりの住民やメディアには知られているし、そこに出入りしている以上、自分の存在が注目されるのは時間の問題だと考えていたからだ。

王子はかなり渋ったが、真理の覚悟めいた気持ちも嬉しかったのだろう、それ以上はなにも言わず真理の好きにさせてくれている。

アレックスの帰国まで5日と迫った日、唐突にそれは始まった。


朝、目覚めると、私邸の前の道路にたくさんの報道陣がいたからだ。

目抜き通りを塞ぐほどの勢いで、鈴なりになっていて真理は、あぁと嘆息した。

とうとう出たのだろう。
護衛も慣れたもので、警察を呼んでメディアの交通整理をさせているが、数は時間が経つにつれ増える一方だった。

護衛がタブロイド紙を持ってきた。
ありがとう、と礼を言って受け取ると、グレート・ドルトン王国一番のタブロイド紙「ザ・ワールド」だった。

真理はふぅーと溜息を吐くとタブロイド紙を眺める。
一面に堂々と登場していて、思わず眼が丸くなった。
先日撮られた、私邸から出て買い物をする自分の横顔が、数枚、割と鮮明に写っている。

「ザ・ワールド」は一番売れているタブロイド紙だ。
理由は、有名人のゴシップなどを多く報道しているからで、そういえばアレクも良く掲載されていた、と真理は思い出す。

物議をかもす取材方法や虚偽の記事でよく問題をおこすが、それでも長年、中流階級を中心に愛されている。
だから、反響は大きい。

もちろんタイトルは
「第二王子!新恋人か?!」だが、読むと内容は結構酷い。

王子に囲われてる女、ソーンディック侯爵家を 差し置いて、図々しく私邸に入り込んでいる尻軽女!
ドルトンでの学歴が確認できないことから、教育を満足に受けていない、今までの王子の相手のなかでは最低ランクの学のない頭の悪い女!みたいなことが書かれている。

ハロルドについては何も書かれていないので、真理はホッとした。

囲われてる、と言われるのは複雑だが、大した取材は出来てないのだろう。
自分のプライバシーが侵害されているとは、あまり言えないかもしれない。
いい加減な内容だからこそ、他のメディアがこぞって取材に来たというところか・・・。

いずれにしろ真理にとっては、ハロルドさえ表に出なければ、自分への中傷は、どうでも良いのだ。

過去の第二王子のお相手達と比べられれば、自分ははるかに劣る。
見た目も普通、確かにこの国での学歴もない、身分も平民、そしてハーフ、本来なら王族になんて会えない階層の人間だ。

だから余計に関心を唆るのだろう。

不必要に目立つ必要はない。
真理は少し考えて呟いた。

「これは、当分、外に出ない方がいいわね・・・」

この私邸の出入り口は目抜き通りに面した正面 の麗しいエントランスか、業者などが出入りする裏口だが、どちらにも報道陣はいる。

アレックスが帰国するまで大人しくしよう、真理はそう決めると、タブロイド紙をテーブルに放った。

しおり