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ストレス発散生活

 リコリスが住んでいる家は、かなり古びた外観のもの、中はいたって普通だった。
 木造の家は、外とは違い温かみを感じた。
 キッチン、ダイニング、洗面所、リコリスの部屋があり、2つの空いた部屋と簡単に言えば間取りはそんな感じ。
 
 「1つ空いている部屋があるでしょ? そっちを使って」
 「ああ。分かった」
 
 俺はドアノブを手にし、回そうしたが、鍵がかかっていた。
 
 「開かないぞ?」
 「そっちじゃないって。もう一つ隣の部屋」
 「ああ。分かった」
 
 言われた通り隣を開けると、難なく開いた。
 部屋にあったのは、ベッドと机。それ以外何もなかった。
 俺はダイニングの方にいるリコリスに大声で尋ねる。
 
 「ここには誰かと一緒に住んでいたのか?」
 「ううん。でも、私が住む前に誰かが住んでいたみたい」
 「へぇ………」

 そうして、俺は、広い家で寝て、食事をし、外に出て、魔物をひたすらに倒すという生活を送った。
 魔物をひたすら倒し、ストレス発散。今まで使えなかった高度魔法をバンバン使って、魔物を倒していく。
 魔法を使うことが楽しくて仕方なかった。

 飽きること? ないない。
 だって、小等部からずっとしょぼい魔法しか使えなかっただぜ?
 今じゃあ、爆発魔法をドカーン、ドカーンと連続で放つことができる。もう楽しくてしかない。
 
 「アハハ! めちゃくちゃ楽しい!」
 
 裏世界ストレス発散生活は思った以上にゆったり。
 まぁ、たまに彼女とケンカをすることはあったが。
 それは俺が風呂に入ろうとした時だった。風呂場のドアを開けると、そこには裸のリコリス。雪のように白い肌が丸見えだった。
 
 あ、やっちまった………。
 女と暮らすということは、こういうハプニングも考えられた。夫婦、ましてやカップルなどでもない俺たちは、この先がどうなるか見えていること。
 
 「バカぁ——!!」
 
 リコリスは顔を真っ赤にさせて、たらいを投げてくる。
 俺はドアを閉め、謝りながら逃げたが、次の日になってもリコリスは怒っていた。
 事故なんだと説明すると、彼女は口を聞いてくれるようになったものの、その日から彼女の態度が少し変わったような気がする。

 そんなリコリスの日常は俺の様子を眺めたり、散歩したりしていた。
 リコリスの家の近くには、家などはなく、他の悪魔たちが住んでいる様子はなさそうだった。
 本当に暇だったんだな………まぁ、近所に誰もいなんだったら当たり前か。

 俺が休憩がてら、たまに氷で月の巨大彫刻を作ってやると、彼女は興味深々に見上げていた。
 氷は空の赤によって、巨大レッドムーンのようになっていた。

 「氷魔法か………いいわね」

 憂いの目を浮かべながら、リコリスは巨大氷彫刻を見ていた。

 「お前、闇魔法以外に何ができるんだ?」
 「できない。闇魔法しか使えない」
 「そうか」
 
 そう答えたリコリスの声はどこか悲しそうだった。
 
 「お前、他の魔法を使ってみないか?」
 「え?」
 「お前、出会った時、弟子になりたいって言ってただろ? 俺が教えてやるよ」
 「ハッ。あの時は冗談で………」
 「氷魔法を使ってみたくないか?」
 
 魔法を使えない悔しさは俺が一番知っている。魔法を使う楽しさもだ。
 
 「つ、使ってみたい………」
 
 小さく呟く彼女の紫の瞳はキラキラと輝いていた。
 
 「よしっ。俺が師匠だな」
 「調子にのるな」
 
 プクーと頬を膨らませるリコリスに、俺はニコリと笑う。
 そうして、俺はリコリスに氷魔法を教えることになった。
 次の日から、午前中はリコリスに氷魔法を教え、昼食を取った後は、ひたすら魔物を倒すという生活サイクルになった。

 裏世界にやってきて、1年が経とうとしていた時。
 俺のレベルは9000に達していた。

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