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プロローグ〜異世界への旅立ち{♣︎}

 私は龍崎 涼香(りゅうざき りょうか)17歳の高校2年生。

 趣味は、カラオケとアニメ鑑賞と小説を読むことだ。

 そして私は今日、同級生で幼馴染の舞沢 直樹(まえざわ なおき)に思いきって告白する。

 そのため学校の帰り私は、ドキドキしながら直樹がいつも通る道で待っていた。

 私はコンクリートづくりの塀に寄りかかり、目の前の小川のせせらぎの心地よい響きに耳を傾けている。

 直樹のことを待つ間、私はその小川の数十メートル先に見える丘を懐かしく思い眺めている。

 そう私は、その丘の上にある大きな木の下の根元で、小さい頃よく遊んだことを思い出していたのだ。

 夕方のためか誰もこの道を通らず、鳥の鳴き声がただただ響き渡っているだけだった。

 ここで待ち続けて約1時間ぐらい過ぎただろうか結局、直樹が姿を現すことはなかった。

 これだけ待っていてもこないなら、今日は直樹にもう会えないだろうと私は思った。

 なかば諦め私は、寂しげに肩を落とし歩き出した。

 私は歩きながら色々考えていた。

 ずっとこのまま直樹に、会うこともできず、告白できないのではと不安が頭をよぎる。

 あれこれ考えながら歩いていると偶然、幼馴染で同級生の久瀬 要(くぜ かなめ)が通りがかった。

「よっ! 涼香じゃねぇか。珍しいな。こんなとこで何やってんだ?」

「あっ! 要。今、帰りなんだね」

 今いだいている気持ちを悟られないように私は、無理に笑顔をつくろい要の方を向いた。

「ああ、部活でな。いつもこのぐらいの時間になるんだ」

「そっか。大変そうだね」

「涼香。ああ。色々大変だけど、好きなことだからな。そういえばお前、まだ直樹のことが好きなのか?」

 要は私の顔を覗き込みそう問いかける。

「あ、うん。だけど、なかなか告れなくってね」

 そう私は高校の入学式の前日、要に告白された。だがその時すでに、直樹のことが好きだったため断った。

「そっか。じゃ、まだ俺にもチャンスがあるってことだよな?」

「要、ごめん。それは前にも言ったと思うけど」

 私が素っ気なく言うも要は、一向に諦める気配がない。

「分かってる。だけど、まだ少しでも可能性があるなら。俺は絶対、諦めないからな」

「要……」

 どうしたらいいのかと私は頭を悩ませる。

「まぁ安心しろ。直樹にフラれても俺がいるからな」

 要は優しく微笑み、私の頭を軽くポンッと叩いた。

 そして涼香と要は、帰る方向が一緒だった為、いろんな話をしながら歩いている。

 すると、まだ夕方の5時ぐらいだというのに空には、見たこともないようなどんよりとした黒い雲がモクモクと辺り一面に広がり強い風が吹き始めた。

「うわぁぁ〜。なんなのよ。この、とんでもない風は!?」

「クッ、確かに普通の風じゃない。と、飛ばされそうだ!」

 そして突風が吹いたと思った瞬間、私と要の目の前で巨大な竜巻が発生した。

「キャァーー」

「うわぁぁぁーー」

 そしてその竜巻は、涼香と要をのみ込みさらっていった。

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 ……そして涼香と要は、その竜巻と共に見知らぬ場所へと降りたった。

 草花の仄かな甘い香りが風に乗り、涼香と要の鼻をくすぐる。すると2人は、ハッと目を覚ました。

 そして、涼香と要は上体を起こし、ここがどこなのかと思い見回してみる。

 すると2人の目の前には、西洋風の城らしき大きな建物が立っている。

 そして涼香と要は、この城の敷地内にある外側の庭園にいた。

 その周辺には草木が生い茂り、緑豊かな山々が雄大に聳え立ちこの国を囲むように連なっている。


「い、痛い! いったい何がおこったの? ……えっ? ちょ、ちょっとここってどこ?」

「ン〜、ん? ここって、どうみてもテーマパークじゃねぇよな」

 要は今の状況がいまいちのみ込めず、なんとか頭の中で整理しようとしている。

 すると突風と激しい揺れと共に城の外で大きな物音がした為、いったい何が起きたのかと建物の中から、如何にも強そうな甲冑を着た数人の兵士が出てきた。

「お前たちは何者だ! それに何故ここにいる?」

 兵士の1人が2人に詰めよる。

「えっと。そう言われても、なんて答えたらいいのかなぁ?」

「確かにな。それに、ここがどこなのかも分からないし」

「ん? それはどういう事だ? まさか、我々をあざむこうとしているのではないだろうな!」

 すると兵士は、ムッとした表情になり要の胸ぐらをつかんだ。

「ちょ、待てって! 本当に、ここがどこなのか分からないんだ」

 要がわけの分からないことを言っている為、兵士は不思議に思い首を傾げた。

 すると別の兵士が、上の指示をあおいだ方がいいのではと提案する。

 他の兵士たちは、どうしたらいいか少し話し合った後、他にいい案もなくその意見に賛同することにした。

 そして兵士たちは、涼香と要を捕らえ有無を言わさず牢屋へ連行していった。

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 ここはこの城の地下にある牢屋。

 冷たい岩壁に囲まれた薄暗い牢は、如何にもお化けでも出そうな雰囲気を醸し出している。

 あれから涼香と要は、なかば強引にこの牢屋に連れて来られた。

「なぁ涼香。もしかして、ここって異世界なのか?」

「ん〜。どうなんだろうね。だけど、ここが知らない場所だってことは間違いないと思うよ」

 涼香は、何でこうなったのかと頭をかかえ溜息をついた。

 そして要は、心配そうに涼香を見つめていた。

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