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ハードゥス独自の環境

 ハードゥスは特殊な世界だ。様々な世界から漂着物が届き、それによって世界を構築しているのだから当然かもしれないが、それだけではない。
 そもそも漂着物が何故ハードゥスに到着するかといえば、外の世界の流れを創造主が無理矢理変更したためだ。そして、その終点をハードゥスに設定したから。
 実はその後、外の世界が安定した段階で創造主がこの流れを戻そうとしたことがあったのだが、その前にれいが既に流れの方を掌握していて、変更を許さなかったのだ。流石にれいもそこまでの身勝手は許すつもりはなかった。もっとも、その流れを掌握しているれいは、本体の方のれいなのだが。
 ともかく、そういうわけでハードゥスには今でも漂着物が流れ着くのだが、当然、その漂着物を運んでくる力の流れもハードゥスを通過することになる。
 漂着物以外は通過するだけではあるが、通過しているのが力の塊である以上、ハードゥスに全く影響を及ぼさないわけもなかった。それも常時通過しているのだから、通過した一瞬の影響は気づかないほどに微々たるものだとしても、それが積もり積もってかなり影響を及ぼしている。
 例えば、ハードゥスに生息する存在の活性化。力に満ちた世界に常時晒され続けていることになるので、その影響は自然と出てくる。それが活性化であり、その状態だけでも、適応すれば元の世界に居た時よりも格段に強くなれるのだが、そんな環境で修練を積めば更に大幅なパワーアップが可能となるのは必然だろう。
 もっとも、それはハードゥスに存在する全ての存在に当てはまるので、人だけでなく魔物も強くなっているというになる。なので、体感としては分かりにくいかもしれない。つまり何が言いたいかといえば、
「相変わらず新人は弱いな」
 ということになる。とある町で戦闘訓練をしていた教官は、新しく漂着した者達の弱さに嘆息した。
 しかし、人はまだいい。そうして戦闘訓練も受けられるし、町の中で仕事を見つけられもするだろう。生きるためには戦いが全てではないのだ。
 だが、この格差は魔物でもそうなので、新しい種が根付く前に絶滅してしまうのだ。それはれいの悩みの一つでもあるので、最近は新しく来た魔物は一定期間隔離するという処置を取っている。そのための大陸も用意したし、周囲にはそのために隔離した海も用意した。
 最終的にはそこから離れなければならないが、おかげで全滅する可能性は減った。もっとも、そこに漂着した人は連れていかない。人は人に育てさせればいいのだから。
 その大陸の周囲は海ごと高い山で囲っているので、容易に辿り着くことは出来ない保護区となっている。まぁ大陸といっても、実際にはただの大きな島なのだが。
 そういう格差の是正も必要になってきたりと、ハードゥスの管理もより一層忙しくなってきた。ただ、その分管理補佐も育ってきているので、れいの感覚としては忙しさは大して変わっていない。今でも多少自由に出来る時間を捻出できているほど。
 それはそれとして、れいは本来見えないはずの通過していく力の流れに目を向ける。というよりも、ハードゥス内から見れば、その流れの中に存在しているのだが。ただし、れいだけはその力を弾いている。でなければ、影響を受けて今以上に成長してしまうので。それに、弾くのに有り余っている力が使えて丁度いいのだ。
 その力の奔流を眺めながら、れいは何かに使えないだろうかと考える。元々外の世界を循環している力とはいえ、力には変わらない。ただ、使うにしても加減しなければ外の世界に影響が出てしまうというのも考え物だが。
「………………いえ、利用するよりもいっそ、この流れに私の力も加えて外に流してはどうでしょうか?」
 そうすれば余剰分の力を棄てることが出来る。そう考えたれいだったが、そういえばと思い出して首を横に振る。同じことを既に本体のれいが、外の世界に出ている分身体を通じて行っていた。これ以上やってしまうと、外の世界の容量的には問題なくとも、外の世界そのものをれいが支配してしまうことになってしまう。
 本体のれいはその辺りを調整して流しているので、勝手に行うことは止めておいた方がいいだろう。かといって、申請しても許可は下りない。膨大な力を持て余しているのは本体の方も同じ。いや、むしろ本体の方が酷い状況だろうから。
 そういうわけでその考えを却下すると、何か利用出来ないかと再度思案する。しかし、それも止めておいた方がいいだろうと諦めた。
「………………それをするのであれば、自分の力を使った方がいいですからね」
 当初の予定では、漂着物だけで世界を構築していこうと考えていたのだが、予想以上に力が溢れてしまっているので、力を使うためにも何か創造しようかとれいは思案してみる。しかし、特にこれといった物が思い浮かばない。必要な物は結構揃っているどころか、色々な物資のストックも順調すぎるほどに溜まっていっている。
 それでも何か、となると管理補佐しか出てこない。だが、現状では管理補佐は十分過ぎるほど供給出来ているので、これ以上供給しても少し仕事が減る程度で、管理補佐達の手も空いてしまう。流石に遊ばせておくというのは勿体なかった。
「………………新しい大陸とそこの管理代行のセットというのが許容範囲内でしょうか」
 それでも過剰ではある。今では小規模ながらも国家と呼べる物が幾つか誕生しているが、それでも海を渡った者は出ていない。だというのに、そこで新しい大陸というのもあまり意味がなさそうであった。
 結局考えても答えが出なかったれいは、改めてハードゥス中を歩いてみることにするのだった。

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