バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

力加減に悪戦苦闘

 れいは幾人もの管理補佐を創造し、管理業務の多くを割り振って任せているが、それでも世界の管理業務であるために、やるべき仕事は山ほどある。
 それに、れいでなければ難しい作業というのも中にはあるので、完全に全てを任せるというわけにはいかない。
 それでも、れいの作業能力を持ってすればある程度の余裕は生まれる。散歩しながら処理できる仕事もあるので、計画的に処理していけば割と自由が利く。
 そんなれいの最近の悩みは、自身の成長速度だろうか。ダンジョンクリエーターの件は気にしないとしてとりあえず解決したので、今はそちらの方が問題だった。
 今のところは世界の維持に大半の力を使い、余剰分の一部を本体へと返還することで何とかなっていたが、最近は本体のれいが返還した力の半分ぐらいしか受け取ってくれなくなってしまった。それだけ向こう側も成長に苦労しているということなのだろう。
 その余剰分が蓄積されていくために、ただでさえ不得手な力の調整が更に難しくなっていた。最近ではあまりにも成長し過ぎて、管理補佐相手でも気を遣うレベル。
 そういうわけで、最近のれいは空いた時間の全てを力の調整につぎ込んでいた。しかし、それもまた成長を促進させる一助になってしまうというのが皮肉なものであった。
 それでも、力の調節の上達速度の方が成長速度よりも上回っているようで、少しずつだが上手くいっていた。
「………………これは、今後も空いた全ての時間をこれに注ぎこまなければならないのでしょうか」
 力の加減を行っている最中、ふとれいはそう考える。現在の両方の成長速度を考えれば、今後は少しは時間が作れそうだとは思うが、それでも多くの時間は、引き続き力加減を考えないといけないだろう。最終的には更に自由に出来る時間は増えるとは思うが。
 その事実に、れいは困ったものだと思う。これではペットとの触れ合いの時間が減ってしまう。ハードゥスの監視は仕事に分類されるので問題ないし、漂着物の配置なんかもまた仕事であるので問題ない。だが、ペット関連はあくまで趣味でしかなかった。
 れいのペットであるラオーネ達も成長しているので、れいとしても遊びがいがある。既にネメシスとエイビス以外の管理補佐よりも強くなってはいるが、それでもれいとの差は広がるばかり。なので、ペットとの触れ合いも力加減の練習にはなるが、それでは弱過ぎる相手の力加減の方が上手くいかない。
 困ったものだと再度思う。ペットとの触れ合いは、れいの数少ない楽しみであるのだから。
 もっとも、ラオーネ達は放置していても勝手に育つ。餌は不要だし、遊び場は結構広い。ラオーネとヴァーシャルが居るのはペット区画なので、遊び相手達は適当に創造しておいた。
 モンシューアは漂着物を集めた一角に在る海の中だが、あそこはあそこで魔物の数も増えたので、遊び相手には困らないだろう。
 そういうわけで、れいの心情以外では放置でも問題ないのだが、だからといって放置もしたくない。中々に困ったものであった。
 そうこうしている間に力の加減も大分修得出来てきた。幾年かあっという間に過ぎていったが、まぁ問題は無い。その間の監視はしっかりと行っていたので何があったかは把握しているし、一角内での力の強さや、人の中に流通している道具屋や装備品などの性能に対する情報収集も最近はしっかりと行っている。おかげでそちらの力の加減も大分修得出来ただろう。
 ダンジョンクリエーターの方も順調に減らせたので、もう少し減れば無理のない密度に収まってくれそうだ。そうなれば制限も撤廃してもいいだろう。
 流れていく時間の中で、他にも色々と変化は起こる。その中でも漂着物がやはり大きな変化を起こしていく。といっても、強き者が流れ着いたというわけではない。いや、そこそこ強いのは流れ着いてきたが。
 生き物で言えば、魔物の種類が増えたことだろう。おかげで北の森にも魔物がそこそこ生息するようになった。
 植物に地形にと他にも色々と増えたが、やはり最も大きな変化は、試験的にではあるが、一つの大陸で新しく実施してみた法則だろう。
 流れ着いてきた法則を紡ぎ合わせて組み上げたそれは、レベルやスキルなど、幾つもの世界の法則を組み合わせて作られている。おかげで自らの能力が数値化され、より自身について解りやすくなった。
 もっとも、それを組み上げたれいは微妙な気分になりはしたが、管理者側として見れば、管理が楽になるだろう。
 ちなみに、この法則を用いてれいを計測すると、法則の方がバグった後に機能を停止するので、再度組み直さなければならなくなる。なので、れいに関しては測定から除外するように組み直した。
 ネメシスとエイビスでは計測結果にエラーが出るが、それだけで不具合は生じないようなので問題ないだろう。
 流れ着いたので、とりあえず試験的として大陸の一つで運用してはいるが、れいはこれを広めるつもりは今のところはなかった。一応それとは別に、せっかくなので、保留にしていた大陸によって法則が違うというやつの試験運用も兼ねて、ということにしていた。

しおり