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迷宮第二形態

 れいがハードゥス唯一の国に褒美を渡してどれほどの時が過ぎたか。
 あれから順調に地下迷宮を攻略していってくれるので、その分ダンジョンクリエーターも減っていく。しかし、改めて在庫を確認してみると、逆に増えているという不思議な現象が起きていた。
 このダンジョンクリエーター漂着の波もいずれ収まるだろう。諦めたれいは、あまり深く考えないようにすることにした。
 そんな日々を過ごしていたある日のこと。れいの手元に新しいダンジョンクリエーターが流れ着いた。しかし、今回流れ着いたダンジョンクリエーターの中に変わり種が混在していることにれいは気づく。
「………………これは……」
 その変わり種を手にしたれいは、先に一緒に流れ着いた他のダンジョンクリエーターを保管してから、興味深げに残した変わり種のダンジョンクリエーターを観察する。
 今回流れ着いたダンジョンクリエーターは、元居た世界では塔型と呼ばれるタイプのダンジョンクリエーターらしい。
 元々のダンジョンクリエーターは、地下にダンジョンを構築する。その際、僅かではあるが実際に地下も掘る。そこから空間を切り取り、別の空間へと繋げていく。なので、僅かではあるが土地が必要なのだ。
 今回の塔型は、地上に異空間への入り口を設置し、そこから異空間に構築したダンジョンに案内するというモノだった。つまり、地上に入り口を一つ創るだけなので、土地はほとんど使用しない。
 攻略難度など、それ以外はどちらも性能としてはあまり変わらないようなので、れいとしては流れ着くなら塔型ならよかったと思った。これなら気兼ねなく森の中に設置できる。
 しかし、塔型のダンジョンを構築するダンジョンクリエーターはまだこれからという段階で、通常のダンジョンクリエーターと比べてまだ数が多くない。
「………………」
 れいは少し思案した後、とりあえず使い勝手を確かめるために一度設置してみる事にした。
 設置するのは、迷宮大陸と化している新しい大陸。地下迷宮の密度が高いので、最近別大陸に移植して少し減らしていたところだった。
 この大陸にも小規模な町は存在するのだが、まだそこまで育っていない。管理補佐を派遣して管理しているとはいえ、まだまだ生まれたばかりということだろう。
 その大陸に塔型のダンジョンクリエーターを設置する。まずはダンジョンクリエーターを地上に置くと、直ぐにダンジョンクリエーターは姿を消して楕円形の穴が空間に開く。
 異空間への入り口となるその穴は、高さ二メートルちょっとで、幅は大きいところで一メートルほどだろうか。人一人なら通れるだろうが、入り口としては狭い。
 だが、実はこの穴、目印であって入り口でも何でもない。穴というのもそう見えるだけで、実際は看板のようなものだ。
 異空間への本当の入り口は、その看板の前に立つと地面に現れるダンジョンクリエーター専用の転移魔法陣と呼ばれる代物。その転移魔法陣の上に居れば、全員一気に異空間へご招待というわけ。
 転移魔法陣の大きさがダンジョンの難しさの目安と言われており、大きい転移魔法陣ほどダンジョンが成長していて難しいらしい。ちなみに現在の設置したばかりだと、そもそもまだ中身が出来ていないので、転移魔法陣は現れない。
 もっとも、迷宮大陸にある設置している迷宮は、全て成長が遅くなるように強制的に調整されている。流石にまだ狩る側がほとんど居ないのに成長されても困るので、成長の上限も同時に設定されていた。
「………………」
 それはさておき、れいは設置された塔型の迷宮に視線を向ける。まだ中身はほとんど出来ていないが、それでも外側は場所を然程取らない。
 ただ、成長と共に入り口である転移魔法陣が拡張してしまうので、その辺りが心配か。転移魔法陣は周囲に元々在ったモノに関しては飛ばさないようだが。最大でどの程度まで大きくなるのか調べておいた方がいいだろう。
 現段階では、最初の設置段階では塔型はあまり場所を取らないのでいいが、後々成長した場合は、最初から入り口の大きさが変わらない地下型の方が優秀といった印象をれいは抱いた。
 他のタイプは無いのだろうかと様々な世界を調べてみたり、れいの分身体ネットワークに在る知識を探してみたりしてみたが、どうやら他にはまだ創られていないらしい。
 この辺りは他の管理者の想像力に任せ、れいはどちらを運用していくかを思案する。塔型が優秀なのであったのなら、地下型を塔型へと組み替えるつもりだったのが、実際に運用してみると微妙そうな感じがした。
 それでも初期の頃は優秀なようなので、直ぐ攻略される前提であれば塔型の方がいいかもしれない。れいは従来の地下型と新しい塔型の配分を考えながら、今日のところはこれで観察は終わりと、他の大陸へと移動していくのだった。

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