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3階

 3階に辿りついた。

 3階はどのような仕組みになっているのかなと思っていると、電流ビームが一直線にこちらに向かってきた。クスリは不意を突かれる格好となったものの、どうにかこうにか回避することに成功した。

 一息をつく暇すら与えられないなんて、シビアすぎやしないか。過酷な難易度に設定されているゲームであっても、深呼吸をするための余裕くらいは確保されている。

 1階、2階とは異なり、両端に電流は流れていなかった。3階は違うタイプのマップにしたようだ。

 3階のマップにおいては、ビームを遮断するための防御壁を作られていた。ここに退避することで、電流を回避できると思われる。

 1階、2階と同様に素早くクリアしなければならないのかな。先ほどの過ちを繰り返さないため、なるべく急ごうかなと思った。

 防除壁の設置されている左側にポジションを取ることにした。真ん中にも設置されているもの
の、ここから進むというのはリスキーすぎる。強行突破は命取りになりかねないので、安全な道を選ぶことにした。

 全ての進行方向から、電流ビームは飛んできた。左側にある回避ゾーンを利用し、光線から身を守ることに成功した。

 真ん中、右側の防御壁も電流をきっちりとガードしていた。見掛け倒しのハリボテでないことに安心感を覚えた。鬼畜仕様なので、偽物となっていても違和感はない。

 電流ビームの間隔は一定ではなかった。小学生時代によくやった、「だるまさんが転んだ」をやっているような感覚を受けた。命がけであるところは、単純な子供遊びとは異なる。

 3階は電流で満たされることはなかった。1階、2階と異なる仕組みにしたのは、心理的なトラップを仕掛けるためだったのかな。人間の脳の思い込みを利用した、実に巧妙なシステムを作り上げたものだ。

 建物の中には宝箱が置かれていた。孤島の島がポカーンと浮いているかのようだった。

 3階の仕掛けの中で、あの宝箱をゲットするのは賢い選択とはいえない。宝箱を開ける前に、電流によって命を吸われる。(宝箱の中身は電流攻撃を半減させる防具で、ボスと戦うにあたって必須アイテムといえる)

 時間的余裕が生じたので、「ひじょうようのにく」を食べてみる。お腹メーターも30を切ったので、ここらへんで腹を満たしておきたい。

「ひじょうようのにく」は乾燥しているために、全体的にパサついていた。路上に捨ててあった肉を、そのまま燻製にしたかのような味だった。極力、口にしたくないまずさだ。

 お腹のメーターは20回復した。極限にまずい肉で20の回復にとどまるのは罰ゲームに近い。こんなのを何個も食べなくてはならないと思うだけで、モチベーションは大いにさがった。

「おなかメーター」が50では心もとない。クスリはもう一つ、「ひじょうようのにく」を食べることにした。宿に泊まれないときはこれでお腹を満たすしかない。
 
 命あってとはいえ、腐敗した肉を食べるのは避けたい。宿の食事になるべくありつける展開に持っていきたい。

 二つ目の宝箱を見つけた。こちらは最初のものよりも、さらに取りにくい位置に置かれていた。プレイヤーに取らせるつもりはさらさらないようだ。(宝箱の中身はボスの電流攻撃を吸収するための剣。装備することで、敵やボスを弱体化できる)

 マップを進んでいると、戦闘画面に切り替わった。仕掛けは単純とあって、1階、2階よりは心理的に余裕が生じていた。

「ポケチューが現れた」

「ピケチュー」、「プケチュー」、「ペケチュー」の次は「ポケチュー」か。最初の文字だけをいじって、他の部分は何も変わっていない。

「ポケチュー」の色は黄色、形は人気アニメに登場する「ピカチュー」そっくりだった。名前こそ違うものの、本物ではないかと思うくらいだった。

 クスリは「ポケチュー」に戦闘を仕掛ける。ポケモンバトルに参加する、トレーナーみたいな心境になった。

「ポケチューに270のダメージを与えた」

 よしよし。これだけのダメージを与えられれば、2~3発で撃破できるだろう。

「ポケチュー」はお尻から電流を飛ばしてきた。室内に設置されているビームを細くしたかのようだった。

 電流の威力こそ高くなかったものの、体内に長時間流れ続ける。クスリの身体は麻痺していくような感覚があった。

「クスリは60のダメージを受け、身体が麻痺した」

 他のRPGでは麻痺すると、一定確率で攻撃を行えなくなる。このゲームではどのような仕様になっているのか。

 クスリはコマンドを選択しようとするも、画面は現れなかった。

「クスリは麻痺したため、このターンをパスした」と表示された。異常状態になった場合、一定確率で行動できなくなるようだ。

「ポケチュー」はチャンスとばかりに、おなかから電流を飛ばしてきた。ビリビリ、ビリビリ、ビリビリという音のあと、サイボーグが壊れるかのような感覚を受けた。

「クスリは170のダメージを受けた」

 ダメージを受けることよりも、麻痺は継続するのか気になった。永久的に行動できなければ、HPは0となり魂を抜かれる。

 幸いなことに、コマンドは出現することとなった。クスリは「こうげき」を選択することにした。

「ポケチューに300のダメージを与えた」

 ポケチューはまだ生き残っていた。持久戦も覚悟しなくてはならないようだ。

「ポケチュー」は頭部に電流を集めていた。脳は高圧電流に耐えられないのか、頭から煙を立ち上げていた。

「ポケチューの捨て身こうげき。プレイヤーに280のダメージを与え、自身は息絶えてしまった」

 HPの残数は30.HPを満タンにしていなかったらあの世送りになっていた。

 クスリは500の経験値を得て、レベルは24にアップする。戦闘回数は少ないにもかかわらず、確実に強くなっている。

 瀕死状態のHPをマックスまで回復させる。常に前回の状態にしておかないと、雑魚的すらまともに戦えない。敵の攻撃力の高さもあってか、豆腐さながらに脆かった。

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