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大型商業施設や高層ビルが立ち並ぶ市街地から徒歩圏内に海を一望できる小高い丘があり、その上に山小屋風の木造の店が建てられている。大きな窓から潮風と太陽の光が差し込み、柱の少ない解放感のある店内には観葉植物とフラワーアレンジメントが飾られている。

「いらっしゃいませ」

ガラスの扉を開けて入ってきたお客様に私は45度のお辞儀をする。
龍峯茶園が経営するお茶カフェがオープンしてから半年たった。経営も順調でメディアからの取材も増えてきた。地元のお客さんが中心だったのが今では少しずつ地方からの観光客、外国人のお客さんも増えている。

『三宅梨香』から『龍峯梨香』になった私はこのカフェでメニューの考案と接客、調理を担当している。

「お待たせいたしました。梅茶サイダーでございます」

掘り炬燵のテーブルにコースターを置き、その上に梅茶サイダーが入ったグラスを置いた。
龍峯のお茶と、親交のある梅農家から仕入れた梅を使った梅茶サイダーは私が考案したものだ。聡次郎さんの部屋で思いついたこのサイダーは季節を問わず好評の商品だ。
お茶に関するメニューを考えるのは大変だけど楽しい。来月聡次郎さんとの挙式を終えたら、新婚旅行を兼ねて茶農園に行く予定だ。

新しい生活と仕事と、聡次郎さんという大切な人と一緒に人生を歩むきっかけをくれたお茶との出会いに今では感謝している。





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