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不可思議な存在

 れいという存在は、一言で言えば異常であろうか。
 誕生の切っ掛けは創造主が創造したからだろうが、その成長の速度は明らかに常軌を逸していた。どう考えても創造主が創造したにしては性能が良すぎる。
 れいはたまに考えることがあった。もしも自分と同じような存在を創造するとしたら自分に可能だろうかと。その答えは、現在のれいであれば可能というものだった。
 そして、現在のれいと創造主では能力に雲泥の差がある。いや、もう比べることすら愚かしいレベルで、創造主が砂の一粒だとしたら、れいの大きさは世界すら超える。
 れいという存在は、それだけの差が開いてやっと創造出来るレベルの存在なのだ。つまり、創造主は切っ掛けではあるが、その大部分は別の何かが介在した結果という証左になるのではないだろうか。
「………………」
 極小の力の調整を身に付けようとしながら、れいは自身の成長速度について考えていた。
 今では本体の方は分身体を無数に創っていなければならない程に成長している。その成長速度は衰えるどころか日に日に加速していて、分身体も毎日のように創っては外の世界に放っている。既に創造主が創造した世界一つにつき最低二人は監視しているまでになってしまった。
 ハードゥスの管理者である分身体のれいは、その力の分配から離してもらっている。それどころか力の一部を本体に返還しているのだが、本体には遠く及ばないながらも、分身体もまた成長するようで力は日々増していた。
 自身のこととはいえ、考えれば考えるほどれいという存在は謎の存在である。本体と全ての分身体は知識は共有しているとはいえ、全ての知識とは限らない。もしかしたら自身の存在について本体であれば何か知っているのかもしれないと思うも、だからといってどうすることも出来ない。問い合わせたところで、隠しているのならば教えてもらえるはずがなかった。
 分身体というのは根本は本体に近いが、それでも個性がある。だからこそ自身を理解出来るのだが、れいの本体というのは、分身体から見ても別格なのである。
 そして、本体にとって分身体というのは、単なる道具でしかない。必要なら増やし、不要になったら消す。そこに何の感情も介在させることなく、当然のように実行出来る程度には、本体にとって分身体は道具なのである。
 そんな道具の問い掛けなど、必要ない限りは答えてはくれない。それでも考えることは許可している辺り、結構自由ではあるのだが。
 力の制御に集中していたからだろうか、それとも力の加減を間違えたからだろうか。何故だか妙なことを考えてしまっていたれいは、一つ息を吐き出した。
「………………一旦休憩にしますか」
 意識を切り替えるように軽く頭を振ったれいはそう決めると、休憩のためにラオーネ達の許に向かうことにした。

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