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在庫過多

 常にというわけではないが、漂着物の量は多い。現在はそれの制御から誘導までを、れいはネメシスとエイビスに任せている。
 もっとも、二人には生き物しか任せていないので、大規模な配置が必要な自然に関しては今でもれいが行っていた。
 そんな一部とはいえ、代行を任せられるほどの二人でも、判断に迷うモノというのは幾つかある。その中でも最近特に扱いに困っているモノを、エイビスはれいに報告していた。
「………………またダンジョンクリエーターですか。最近多いですね」
「はい」
 れいの言葉に、エイビスは困ったように頷く。
 世界の消滅は以前に比べればかなり収まったが、それでも無くなったわけではない。未だにたまに世界が消滅しているので、漂着物の量は多い。
 そんなに気軽に世界を崩壊させていいのだろうかとれいは思うが、結果として外の世界は力が隅々まで行き渡っているので、世界の消滅も無駄ではなかったのだろう。多分。
 ただし、これを行った創造主が完全にその事態をコントロール出来ているのかと考えれば、そんなことは無いと思われた。れいが創造主の性格から推測するに、種だけ植えて後は放置しているのだろうと簡単に推測が立つ。
 以前までであれば、秩序を持って世界が存在していたのだが、今は少し混沌としてしまっている。初期の頃の混乱は無くなったものの、今でも別世界への侵攻を企てる管理者は存在していた。
 それを取り締まる仕組みも構築されているのだが、まだ機能し始めたばかりであまり期待は出来ない。
 ハードゥスの容量的には今のままでも全く問題ないのだが、配置を考える側としては困ったモノであった。
「………………世界を遊技場に見立てて世界を構築するというのが流行ってしまったのは困りました」
 ダンジョンクリエーターのような攻略が前提の迷宮を構築する存在が居るような世界。それを見て管理者達が楽しむというのが、一部で流行ってしまったのだ。
 魔王と勇者と呼ばれる対極の存在を創造して争わす。なんて趣味の悪い遊戯も存在していたり、とにかく色々だ。最近はそれに加えて、以前から管理者間で流行っていた住民の交換も行われいるという。
 そこまでいくと住民一人当たりの容量も増してしまい、それを奪うというのも以前にも増して発生していた。
 世界から漂流物が出てくる以外にはれいには全く関係の無い話なのだが、それでも流れ着くモノが偏りを見せてきたというのは少々困ってしまう。
 管理者間の治安の悪化は、対抗するために組織された取り締まる側に任せればいい。
「………………ダンジョンクリエーターが創るダンジョンは、その中身ほど広大な土地が必要というわけではないとはいえ、地下も有限ですからね……」
 さてどうしたものかと、れいは待機中のダンジョンクリエーターに意識を向けながら思案する。場所はまだあるのでそちらはいいのだが、問題はそこを訪れる者が少なすぎるという方であった。
「………………成長のし過ぎは攻略不能に陥りますし」
 れいは最初のダンジョンクリエーターが製作したダンジョンを思い出す。現状あれを攻略出来るのは、れい以外では管理補佐達とラオーネ達ペット勢ぐらいである。それも管理補佐でも、戦闘に向かない能力の者は厳しいレベル。
 余裕で攻略可能ともなれば、ネメシスとエイビスぐらいしか思い当たらないほど。
 攻略させる気は元々なかったとはいえ、それは流石にやりすぎたかとれいも考えるほどの成長だった。
 それほどとはいかないまでも、ダンジョンというのは放置し過ぎるとそれだけ成長してしまうモノらしい。
「やって来る住民の質は上がっているのですが……」
 れいの呟きに、エイビスがおずおずとそう進言する。実際、ダンジョンクリエーターが存在しているような世界に住んでいる住民の質は高い。しかしそれでも、装備などの他の要素も加えて考えなければならないので、ハードゥスの発展具合を考慮すると、あまり期待は出来なかった。
「………………今のところ、一部のダンジョンクリエーター達に制限を設けることで対応してはいますが、あまり手は加えたくないですからね」
 後は攻略する側に手を貸すというのも一つの方法ではあるが、それも考え物だ。今は地下迷宮の宝箱で装備が出やすくして、更に質が若干高めの物が出やすくしている程度。それだけでも発展の後押しぐらいにはなっている。
 れいは新しいダンジョンクリエーターの設置場所を考えたところで、エイビスを管理業務の方に戻す。
 その後に所定の位置で新しくダンジョンクリエーターを放ち、れいは今後について思案するのだった。

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