バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

とある冒険者の話4

 二階層目に到着する。作製した地図が在るとはいえ、一層一層が広大なので時間が掛かる。戦闘をほとんどしなかった一階層目ですら罠に警戒しながらだったので、突破に半日ほど掛かった。
 これが二階層目移行ともなるとそれ以上に時間が掛かる。階層が変わると出現する魔物が変わるので、二階層目からは戦闘があるから。
 ダンジョンに詳しい者によると、五階層に到着すれば、ポータルという転移ポイントなる場所が在るらしい。ポータルは同ダンジョンの各ポータルと繋がっており、そこに到達していれば一瞬で移動できるようになるとか。
 ちなみに、五階層でポータルを起動させさえすれば、入り口付近にもポータルが出現するらしい。
 このポータルを使用するには、同時に利用する者の全員が目的の階層に一度は到達していなければならないらしく、パーティーの調整などが大変だという話だった。
 それと、このポータルはおおよそ五階毎に設置されているらしい。今のところは四階層目までしか到達出来ていないので、もし本当にそんな便利なモノがあるのならば、最初のポータルまでもう少しといったところ。
 五階層の移動というのは普通に下りてもかなり時間が必要なので、そこまで到達できれば結構な時間の節約になりそうだ。
 二階層目といっても、見た目は一階層目と然程違いは無い。石で出来た明るい通路に、通路の広さも同じぐらいである。なので、言われなければ、現在か何階層目か分からないかもしれない。もっとも、遭遇する魔物で現在が何階層目かは分かるのだが。
 すりすりと床をこするような音を響かせて通路に現れたのは、暗褐色の肌をした酷く痩せた子供のような存在。
 それは手に大きな袋を持っており、それを引きずりながら通路の奥からやって来る。数は三体。
 その見た目から冒険者に餓鬼と呼ばれている魔物であるが、まだ第二階層であるだけに、そこまで強い魔物ではない。ただ背丈が低いので、攻撃が少し当てにくいだけ。
 餓鬼の攻撃方法は、持っている袋を振り回してくるだけ。ただし、その袋を斬るなりして破ってしまうと、中に入っている腐った水が降りかかってきて、最悪病気になってしまう。引きずっていても破れないというのに、斬ると普通に斬れてしまう。そういう意味では厄介だが、袋の攻撃にさえ注意すれば何の問題も無い。
 男達は餓鬼と距離を縮めると、相手の攻撃を軽くあしらって切り伏せていく。戦闘で注意すべき点は罠の有無ではあるが、魔物との戦闘中に発動する罠はあまり多くは無いので、注意すべき点は限られている。
 何故そうなのかはダンジョンに詳しい者曰く、ダンジョンクリエーターが楽しむためだと答えていた。言ってしまえばダンジョンとは、ダンジョンクリエーターの遊技場であるらしいのだから。
 それでも警戒はしているが、今のところ男達は魔物との戦闘中に何かしらの罠が起動したことはなかった。
 餓鬼との戦闘は、はじまってから数分程度で終わる。地下迷宮で魔物を倒した場合、返り血なども含めて時間の経過とともに消滅する。
 地下迷宮に倒した魔物が吸収されたからだと言われているが、詳しくは不明。これはダンジョンでも同じ現象が確認されていたらしい。
 ただし、戦闘によって起きた結果である負傷や病気などは消滅しないようで、注意が必要であった。
 消滅した魔物は、代わりに魔石と呼ばれる物と何かしらの素材を落とす。魔石は専用の道具の動力源となり、素材は武具などの材料になる。
 それらを冒険者ギルドに売ってお金を得るのが、冒険者という仕事であった。もっとも、最優先は地下迷宮の全容を明らかにすることらしいが。
 男達は持ってきた袋に魔石や素材を分けて入れた後、更に先へと進む。幾度か戦闘を挿みながらも、持ってきた地図を頼りに進むと、途中で地図に無い部屋を見つけた。
 地下迷宮は通路こそ変わらないが、部屋については増えたり減ったりすることがある。増えた部屋については宝箱が設置されている場合があるので、冒険者としては気になる事柄であった。
 ただし、罠がある場合も多々あるので、新しい部屋を調べるというのは本当に注意が必要であった。もしかしたら閉じ込められて大量の魔物と戦わないといけないという可能性だってあるし、罠によって出現する魔物に限って言えば、出現する階層は関係ない場合もある。
 なので、新しい部屋というのは大変魅力的ながらも、恐ろしい場所でもあった。
 男達はそっと部屋の外から中の様子を窺う。部屋によっては、外から見た光景と、中に入った時の光景が異なっている場合もあるが、その可能性はそこまで高くはない。
 中には扉付きの部屋とかもあるが、浅い階層ではそこまで複雑ではないので、外から見て問題なければ入るというのでも十分に機能した。
 男達が覗いた部屋には、ポツンと中央に木箱が置かれているだけで何も無い。おそらくそれは宝箱であろうが、あからさますぎて警戒してしまう。
 一度顔を引っ込めて、男達はどうしようかと相談を始めた。
 部屋に置かれているのは、見た目はどう見てもただの木箱ではあるが、それは浅い階層ではよく見かける宝箱である。
 ダンジョンでは深層ほど宝箱の見た目が豪奢になり、中身もそれに見合ったモノになるらしい。だが、地下迷宮では木箱からでもそこそこいい物が出てくることがあるので、見逃すというのも中々おしい。
 男達は話し合った結果、まだ浅い層だからと挑戦してみることに決める。外から見える範囲には罠のようなモノは確認出来ない。
 それでも慎重に部屋に踏み出すと、パーティー全員が入ったところで入り口の扉が消える。それと共に土塊で出来た人型が一体、部屋に現れる。
 その土人形は大人の半分ぐらいの身長をしており、横幅も大人の半分ぐらい。しかし、土で固められた身体は結構固そうで、油断は出来そうもない。
 男達は戦いに備えていたので即座に戦闘に入る。土人形は初めて遭遇する敵であった。
 というのも、本来であれば土人形はもっと下の階層で出てくる魔物で、こんな浅い場所で出てくるような敵ではない。ただし、下の階層で出てくる本来の土人形は、男達が相対している土人形の四倍以上はあるので、その分弱体化していた。
 片方の肩を突き出して突撃してくる土人形相手に、男達のパーティーは横に避けて回避する。その突撃は速いは速いが、それでも見てから避けられないほどではない。
 それに安堵した男達は、土人形の突撃が止まったところで攻撃を開始する。しかし、弱体化しているとはいえ硬質な身体を削るので精一杯のようで、中々攻撃が通らない。
 その間に体勢を立て直した土人形は、近くに居た大きな盾を持つ大男目掛けて突撃する。
 しかし、あまり距離が離れていなかったので勢いが乗らず、大男が踏ん張って大盾を構えると、ゴンという鈍い音を響かせて土人形は動きを止めてしまう。
 そこからまたタコ殴りである。大男が大盾を土人形に密着させて行動を阻害している間に、他のメンバーが一斉に土人形へと攻撃を繰り返していく。
 そうして何とか土人形を斃した時には、全員かなり疲れていた。
 少しの休憩後、土人形を斃しただけで気を緩めず、土人形が唯一落とした魔石を回収後、慎重に宝箱に近づいて罠が無いのを確かめてからそっと蓋を開く。
 木箱を開くと、ポンという軽い音の後に木箱が消失し、その場に中身が残る。
 宝箱の中身は何の変哲もない短剣であった。何かしら魔法が付加されているわけでもなく、豪華な装飾があるわけでもない。手にして確認した限り、店売りの安い短剣と大して違いはなさそうだった。
 つまりはハズレということになるが、それでも短剣なので売れば多少はお金になるからまだマシだろう。中には本当にハズレというやつも存在するのだから。
 土人形を倒したことで入り口が現れる。男達はそのまま外には出ずに、そこでしっかりと休憩することにした。罠が解除された部屋は、徘徊している魔物にさえ気をつければ安全なのであった。
 交代で仮眠を取ったり食事をしたりした後、男達は慎重に部屋の外に出る。
 通路に出た後は、地図を頼りに再び下の階層目指して進んでいく。既に二階層の探索を始めて一日が経過していた。

しおり