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少しずつ発展していく世界

「………………管理者達の方は、まぁ大丈夫でしょう」
 管理者達のための交流場。本体に要請してそこに新たな分身体を派遣してもらったれいは、そちらは完全に任せることにした。といっても、どちらもれいではあるが。
 ハードゥスの漂着物を集めた一角はかなりの規模になっていた。
 最初に建物を集めて町を造っていた平原は、あれからかなり拡張して、今では町が三つになるまでに規模を大きくしている。それどころか、れいはその平原とは別の場所にも新たに町を築いたので、現在は漂着者をそちらに流している。そこの管理者として、メイマネの補佐に付けていた者を一人移した。
 もっとも、こちらはまだ村ぐらいの規模ではあるが。それでも少しずつ賑わいを見せている。
 最初に造った町が在る方は子供も大分増えたので、新しい漂着者が居なくとも、今後も人口は増えていくことだろう。最近は森もより深くまで行けるようになっているので、いつか新しく造っている町とも交流が生まれれば楽しそうである。
 人以上に漂着しているのは、やはり自然。森の方は多少町造りで消費出来たとはいえ、全体で言えば微々たるもの。ペット区画の方へと拡張したので、漂着物を集めた一角は全体で結構な広さになった。
 それも海を間に入れているので、新しく増えた場所は別大陸のような感じで配置している。海もまた沢山流れ着いて勢力を拡大したので、その別大陸も大きく囲むようにして海は勢力圏を拡げていた。
 別大陸の方はまだ魔物も少ない。今のところ人は住んでいないが、管理補佐は二人置いている。フォレナーレとフォレナルにそれぞれ教育させた管理補佐なので、森と山の管理は問題ないだろう。
 その大陸には、新たに流れ着いたダンジョンクリエーターを放って新しい地下迷宮を創らせている。それも複数匹居たので、各地で新しい地下迷宮が誕生していた。
 一応元々在った大陸の方でも創らせているが、そちらは帰還の門が在る地下迷宮が大きすぎたので、ダンジョンクリエーターが地下空間を創るために必要な分だけの地下を確保するのに少々手を加える必要があったが。
 とにかく賑わっているというのは確かなので、結構世界として形になってきたのかもしれない。
「………………最初に人が漂着してからどれぐらいが経ったのでしょうか?」
 れいはラオーネを撫でながら、ふと思う。
「………………百年か二百年ぐらいは経過していると思いますが」
 永く存在し過ぎて時間の感覚があやふやなので、れいははてと首を傾げたが、直ぐにどうでもいいかと首を戻す。
 少なくとも、れいが加護を与えた男性はもう居ない。加護のおかげで通常より少し長く生きられたが、それでも結局は人でしかない。多少寿命が延びた程度ではいつか死ぬのだ。
 これが長命種であればまだ生きていただろうが、残念ながら男性はそういった種族ではなかった。
「………………まぁ別にどうでもいいですね。それにしても、多種多様なものです」
 背を撫でながら、ラオーネに語り掛けるようにれいがそう言うと、ラオーネは同意するように「ガウ」と鳴いて返事をする。
「ええ。植物だけではなく、魔物に人にと様々な種類がありますから。ここではそれらが共存し、混じり合って独自の世界を築いているのですよ」
 ラオーネに教えるようにそう言うと、れいは漂着物を集めた一角が在る方角に顔を向ける。
「ラオーネも一度見に行ってはどうです? ヴァーシャルだと大きすぎて大変でしょうが、ラオーネぐらいであればまだ何とかなりそうですが」
 れいの提案に、ラオーネは思案するような間を開けた後、「グウゥ」と申し訳なさそうに鳴いた。
「まぁ、無理強いはしませんよ」
 ラオーネを撫でるのに満足したのか、次は近くに居るヴァーシャルの方へと移動する。
「………………モンシューアならばともかく、ラオーネ達には関係の無い話ですからね」
 ラオーネ達が住んでいる場所は、ペット区画の一角に在る。そこは漂着物を集めた場所からは結構遠い。なので、基本的にそこから出ることがないラオーネとヴァーシャルには、漂着物を集めた場所の話など関係の無い世界の話であった。
 しかし、その漂着物を集めた場所の海に棲んでいるモンシューアであれば、それはまた違ってくる。近くどころか漂着物を集めた場所の中で棲んでいるのだから、そこで起こったことには多少は関心を示した。もっとも、モンシューアを害せる者など居ないので、そこまで興味は示さないが。
 れいも興味を持ってもらおうとしているわけではないので、その話はそのまま流す。
「………………それにしても、管理補佐を創造し過ぎましたかね」
 一般的な評価で世界の規模と管理補佐の数を考えれば、そこまで多いわけではない。しかし、れいの場合はその管理補佐一人一人がおかしな性能をしているので、性能を考えれば明らかに多すぎだった。
 とはいえ、これからも管理補佐は増えていくだろうから別にいいかと考え、改めてラオーネとヴァーシャルを観察する。
「………………それにしても、随分と強くなりましたね」
 れいがラオーネとヴァーシャルに成長を組み込んでみた結果、二匹ともに強く育っていた。
 思惑通りに育ったのはいいのだが、結構勢いよく成長しているようだ。それはモンシューアも同じ。
「………………しかしまぁ、これぐらいでしたら問題ないでしょう」
 勢いよく成長してはいるが、それでも世界が耐えられないというほどではない。ハードゥスに限って言えば、れいよりも弱い内は問題ない。
「………………それにしても、各システムは引継ぎを済ませ、そこから独自に運営させているからいいのですが、創造主はいつになったら別の者へと連絡するようになるのでしょうね」
 指導や監視など、れいが構築した様々なシステムは、第二世代以降の管理者に引き継がせている。そうして他の管理者との関係をほぼ無くしたれいではあるが、それでも交流場だけは創造した世界を使用している関係で、今でもれいが管理している。
 それとは別に、今でも創造主からの連絡事項はれいを経由している。その辺りは何度も伝えたのだが、創造主に改善する気は無いらしい。しょうがないので、今でもれいが連絡役を担っていた。
「………………他の世界はまだ騒がしいようですし」
 世界が消滅する回数は減った。しかし、管理者間でのトラブルは増加傾向にあるという。この辺りは交流が深まった影響でもあるようで、その辺りは悩ましいところのようだ。もっとも、他の管理者とは距離を置いているれいにはあまり関係の無い話ではあるのだが。
「………………ここもまだまだ大きくなりそうです」
 れいは存分にペットを愛でた後、世界の調整のためにその場から姿を消したのだった。その前にモンシューアのところに寄ってからではあったが。

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