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検証と訓練と使徒様!?

 れい様が去られた後、執行人を激怒させた男はとりあえず意識の無いままに牢屋に入れておいた。
 色々と垂れ流して汚れていたが、罰という事でそのまま牢屋に投げ入れておいたので、意識が戻ったら服ぐらいは差し入れてやろう。身体を拭くのに必要そうなものは、目を覚ました男の態度次第かな。
 そういった諸々の片付けを終えた後、俺は訓練場に来ていた。
 あの男の後処理をしていた時から思ったが、身体が異常に軽いのだ。それに力も強くなっている気がする。持とうと思えば、あの小太りの男ぐらい楽に持てただろう。汚かったので指示だけ出して触れなかったが。数少ない長の特権というやつだな。
 これはれい様から頂いた加護のおかげだろうと思い、訓練場で身体を動かそうと思った訳だ。
 とりあえず訓練場内を走ってみる。普段から走っているコースなので、これだけでも違いが分かる。
「うわっとと!!」
 普段通りの感覚で走り出してみると、思わず転びそうになり、しかも壁にぶつかりそうになった。スタート地点から壁まで距離があるというのに、一瞬で移動してしまった。
 足を振り上げただけでその勢いに持っていかれるように歩幅が広くなり、地を蹴るだけで空が飛べそうなほどに勢いがつく。
 そんな状態である。一瞬で壁の前に到着したとしてもおかしくはない。れい様の仰られたちょっとした強化は、俺基準で言えばとんでもない強化だったらしい。
 という訳で、まずはこの身体に慣れなければならない。その場で軽く跳ぶだけで二階ぐらいまで跳び上がれるのだから。
「これは……あの時指示だけ出して持たなくてよかったかもしれないな」
 もしもあの男を運ぶために持ったとしたら、力の加減が分からなくて骨を砕いていただろう。今ならそう思えるので、あの時下した自分の判断は英断だったと思う。
 それから慎重に身体を動かしていく。いつも通りに身体を動かそうとすると、それだけで大変なことになってしまうので、とにかく慎重に。
 それでも、自分ではほぼ動いていないぐらいにゆっくりと動かしているつもりなのだが、傍から見れば少し緩慢な動きだな、ぐらいの速度が出ている。力の制御というのは中々に難しいものだ。
 しかし、これがしっかりと制御出来るようになれば、森の探索も一気に進むことだろう。もしかしたら地下迷宮の探索も少しは出来るかもしれない。
 そういった淡い期待も抱きつつ、その日はひたすらに鍛錬を続けた。そのおかげで、多少だが制御が利くようになった。といっても、まだ日常生活にも苦労する程度だが。
 それと、夜に家に帰ったら興奮した様子の妻に「使徒様!!」と呼ばれてしまった。
 れい様から加護を授かったからだろうが、ただ加護を授かっただけで何か使命を帯びた訳ではないので、その呼び名を止めるように説得したのだが、その説得に一晩掛かってしまった。いや、ここは一晩で済んだと言うべきだろうか。

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