電流ゾーン突入
2日を費やして、レベルを13まで上げた。HPの最大値は295となった。他のステータスも上昇していた。
2日間をレベル上げに費やしたのは、おなかメーターを程よい数値まで減らすためである。次の洞窟に挑戦するのに、「すばやさ」を低下させたままの状態というのはよくない。
ＨＰを満タンまで回復させると、建物の中に入った。どんなコースかと思っていると、高圧電流らしきものが流れていた。
クスリの鼓膜に声を届けられた。どこから発せられているのかは全く分からなかった。
「電流ステージになります。100万ボルトの高圧電流が流れているので、決して触らないでください。一度でも触れるようなことがあったら、一瞬のうちに魂を抜かれることになるでしょう」
ＲＰＧではよく見かける電流ステージ。プレイヤーで遊んでいるときは、実際に電流が流れているのかを確かめるために、壁に触れたりしたものだ。100万ボルトの電撃を受けて、プレイヤーは一瞬であの世に旅立った。
ゲームでキャラクターを操作するのは楽しかったけど、実際にプレイヤーとなるとふざけんなよと思う。他人の命を弄ぶなんて許されることではない。
電流ステージをクリアしなければ、魂を吸われることに変わりはない。クスリは覚悟を決めて、電流コースに臨むことにした。
ステージはRPGのために新しく建てたのかなと思われる内装だった。プレイヤーのために作ったのだとしたら、用意周到といえる。
建物の両脇では強烈な電流がビリビリと流れていた。自分の身体で実験するわけにはいかないので、「やくそう」を一つ投げ込んでみることにした。
草の葉っぱは見るも無残に砕け散った。伊達に100万ボルトの電流が流れているわけではなさそうだ。指一本でも触れたら、ダダでは済まない。
クスリは上の方向に進んでいると、戦闘画面に切り替わった。「ポケチュー」という敵が現れた。
「ポケチュー」は「ポケモン」と「ピカチュウ」を合体したかのように映った。全身80センチ程度で、お尻にちょっとした電流が流れていた。頭には角が生えており、鼻は穴が三つあった。目は卑しく光っていた。
スマートフォンを所持していたなら、画面に収めただろう。物珍しい物体をyou tubeに流せば、年収1億円くらい叩き出せる。手元にスマートフォンがないことを残念に思った。
クスリは戦闘中であることを思い出し、自分に喝を入れることにした。
「見惚れている場合じゃない。一回でもやられたら命を吸い取られる」
クスリは「ポケチュー」を攻撃対象に選んだ。
「ポケチューに140のダメージを与えた」
レベルを13まで上げておいたものの、もっと戦闘を重ねておいたほうがよかったのかな。このレベルでブルドックと戦ったときよりも、ダメージは減らされている。
ポケチューはお尻から電流を生み出していた。
「ポケチューは次の攻撃に備えた」
次の攻撃をなされるまえに、倒してしまいたいところ。クスリは連続で攻撃を仕掛けることにした。
「ポケチューに150のダメージを与えた。ポケチューを倒した」
一体だったので、どうにかこうにか持ちこたえられた。2、3体になった場合はどうなるのだろうか。
クスリは経験値を400獲得し、レベルが2あがった。雑魚的一体ごときでレベルを2も上げてしまうあたり、レベル不足なのは明白だった。
クスリはレベルアップのために建物を出ようかなと思ったけど、許される状況でないことに気づいた。両端の高圧電流は出口の取っ手のところまで広がってしまっていた。脱出しようにも脱出できない状況になっていた。
ポケチューでレベルを上げようと考えていると、一メートル横を唐突な雷が通過。腰を抜かしそうになるも、自分を直撃しなかったことを前向きにとらえる。もろに受けていたら、あの世送りになるところだった。
クスリは建物の一マスごとに色がついていることに気づいた。雷が落ちるところは赤色で染まっていた。この上を通過しないよう、慎重に道を選んでいかなければならない。
赤のルート以外を進んでいると、敵と遭遇することとなった。
「ポケチュー2体が現れた」
こちらの先制攻撃なのでどうにか処理できそうだ。「ポケチュー1」に攻撃を仕掛けることにした。
「クリティカルヒット。ポケチューに600のダメージを与えた。ポケチューを倒した」
幸先はいい。2体目のポケチューに焦点を定めることにした。
「ポケチュー２」は先ほどとは異なり、すぐに攻撃を仕掛けてきた。必ずしも貯めるというわけではなさそうだ。
「ポケチュー2は100万ボルトを唱えた」
クスリの体内を高圧電流通過。ビリビリ、ビリビリ、ビリビリ、ビリビリ。入浴中に感電して死んだ人のようになっていた。
「クスリは220のダメージを受けた」
一撃で最大ＨＰの7割をもっていかれた。雑魚にここまで苦戦するのは、明らかなレベル不足だ。
レベル不足とはいっても、ゲームバランスは悪すぎやしないか。雑魚的をボス並みの攻撃力にするのはいかがなものか。一度死ねば終わりなのに、敵の強さは「死にゲー」といわれている仁王クラスとなっている。宿屋で回復アイテムを補充できていなかったら、敵をまともに倒すことすら難しい。
ＨＰを回復させるために「ドラッグ」を使用。ＨＰは335まで上がった。レベル13の時点で最大ＨＰは295だったため、レベルアップで40上昇したことになる。レベル上昇ごとに最大ＨＰの増加量は増えていく。
「ポケチュー2」は体内の電流を充電していた。先ほどと全く同じ光景だった。
「ポケチュー2は次の攻撃に備えた」
ここでとどめを刺してしまいたいところ。謎の生物に攻撃を仕掛けることにした。
「ポケチュー2に200のダメージを与えた」
敵に対する付加ダメージも追加されていくようだ。レベルアップの恩恵はよくわかっていなかったけど、プラスに作用することを知った。
「ポケチュー2は電流攻撃を行った」
一発で感電死させる威力を持つ電流攻撃を受けた。体内でエネルギーを増幅させたからか、先ほどよりも強い電流が流れていた。
「クスリは300のダメージを受けた」
溜め攻撃によってダメージは40パーセントほど増えることとなった。一撃死も覚悟していただけに、助かってよかった。
こんなにもダメージを受けるのは、「てつのよろい」によるデメリットが発動しているのかな。今度は外して戦ってみよう。
電流攻撃は「まほうこうげき」に分類されるのかな。それならば、「まほうぼうぎょ」を25アップさせる、「まほうぼうぎょリング」を装備しておけばよかった。物理攻撃に気を取られるあまり、魔法攻撃に対する対策を怠っていた。。
回復しようかなと思ったけど、回復→敵の攻撃→回復といったループを延々と繰り返すだけ。クスリは攻撃を仕掛けることにした。
「ポケチュー2に200のダメージを与えた。ポケチューを倒した」
800の経験値を得て、レベル18まで上昇。わずか2回の戦闘でレベルは5も上昇した。
「ドラッグ」を使用すると、最大ＨＰは460まで回復。レベルアップの恩恵をはっきりと受けている。
「てつのよろい」を外し、「かわのよろい」を装備してみた。最大の防御力を得られる防具を外したのは、追加ダメージの有無を調べるため。電流を通しにくい素材を装着することで、変化を試してみたい。
雷の落ちてくる箇所をかわそうとしていると、赤いランプの配置は変化した。一定時間ごとに、ランダムで変更される仕様になっているのか。プレイヤーの命を奪うためなら、どんな手段も厭わないゲームのようだ。
前に進もうとしていると、三たび敵と遭遇することとなった。電流コースを命がけで進んでいるのだから、戦闘をなしにしてほしいと思う。
「プケチューが現れた」
「ピケチュー」の親分といったところか。体つきは「ピケチュー」よりも一回り大きかった。
クスリは「こうげき」コマンドを選択する。
「プケチューに280のダメージを与えた。プケチューを倒した」
鎧と被ダメージの関係について調べようと思っていただけに、残念な展開ともいえた。
レベルは20まで上昇。1時間と経たないうちに、7も上昇することとなった。
「やくそう」でこまめに回復すると、最大ＨＰは510となった。
マップをうろつくよりも、建物内の敵を倒したほうが手っ取り早くレベルを上げられる。電流で一撃死のリスクはあるものの、ここで敵を倒してレベルを上げたい。
安易な発想をしていると、電流のペースに変化が見られた。建物内を流れる周期が明らかに短い。同じ所に居続けると、建物ごと感電する仕組みになっているのかな。
クスリは大急ぎで次の階段を探すことにした。幸いにもすぐに階段を見つけられたので、ことなきを得ることとなった。
