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 アルザス、ライル塩湖の西方にあるライル平原。

 そこで急遽集められたアルザスの全軍が布陣していた。
 その数は1000。
 国の一大事に、大人だけでなく、十代の未成年まで集めて編成されたまさしく国の全兵力だった。

 その先頭で、将軍アルバートは焦りの表情を浮かべていた。

 全兵力と言っても、ドラゴニアの一万の軍隊が現れれば、ひとたまりもない。
 何もせずに殺されるわけにはいかないからと兵を集めたが、戦いになれば全員死ぬことになる。

 唯一の希望は、ラセックスに交渉しにいったキバだけだ。

「敵は、既にライル平原の西端部まできております」

 伝令が将軍にそう伝えた。
 将軍は身震いする。

「――将軍!」

 と、アルザスの陣に馬に乗ったキバがやってきた。

「おお! キバ様!」

 兵士から歓声が上がった。
 先のルイーズたちとの戦いでアルザスを圧勝に導いたキバは、すでに兵士たちの間で神格化されていた。
 だが、その顔は暗い。

「どうしたのですか、キバ様? ラセックスの援軍は?」

 将軍が聞くと、キバは首を横に振った。

「とにかく戦いの準備です。ドラゴニアの動きは予想以上に速いです。やれるだけのことをやりましょう」

 軍師はそう語りかけた。

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