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出会いの思い出2

 未来の身代わり志願した自分は、アジトの窓に手持ち錫杖と経帷子を投げ入れるように未来に頼みました。そして、アジトの主の確保に協力した警察に性転換薬をもらい服用しました。すぐそばに未来はいましたが、こちらの変わりゆく裸を恥じらいの表情を浮かべず見ていました。僕が完全に女の姿になると、すぐに未来は服を手渡してくれました。
 おっと、みなさんに会話の様子をお見せしないと。では、続きをどうぞ。

「んで、後は、未来に任せて、学校の正門に立ってたら、案の定未来と勘違いされて拉致されたわけだ。」
「マスター、ところで、その……性転換薬って」
「今は、脳の下垂体に大きなダメージ与えるっていう理由で、国の指定危険薬物になってる」
「ええええええええええええ!?」
「その時は、まだ指定されてなかったから使わせてもらえただけだ。今、買ったら、麻薬取締法違反になるぞ?」
「いやーそれにしても、マスターの女体化はなかなかの見物だったな……」
「ちょ、あれ結構ハズかったからな……」
「え、あれ恥ずかしかったのか?」
「そうだよ!! 勘弁してくれ……」
「それで、マスターは、どうなったのですか?」
「ま、その、アジトにあった噂の調教マシーンで意識吹き飛ぶ寸前まで調教された。」
「え……っそれって、エロゲーみたいな、女のからだにある穴を隅々まで」
「うん、詳細を妄想しないで。だけど、そんなことされたのはたしか。」
「へえ。よく、メスイキして堕ちなかったもんだな……」
「ぎりぎり踏みとどまった所だ。失神しかけた所で浴室に投げ込まれたのが救いだったな。」
「それで、薬が切れて、元に戻って脱衣所見たら、俺が投げ入れたバックがあったのか。」
「そう、ってどうやって窓開けたんだ!?」
「ああ、静かに、同行してくれたポリスに壊して開けてもらった……」
「運が良くてよかったな。」
「だな。」
「それで……マスターは、経帷子とかどうしたのですか?」
「自分の経帷子は着て、手持ち錫杖は右手で掴んで浴室に戻ったな。」
「あれ、その前に、自前の清め塩で全身洗浄してなかったか?」
「ああ、それはしてた。それで、浴室に入った後で、部屋中に塩まいたな」
「マスター……その作業要りました……?」
「当たり前だ。しかも、浴室のどこからか知らんが、複数の女のうめき声が聞こえてきたからな。多分、アジトの主に調教されすぎて浴室で死んだ女達だろうな……浮かばれずにいたんだろう……」
「マスターって霊媒師ですか」
「違う」
「即答だな、おい。」
「当たり前だ。最低やるべきやったことをやっただけだ。」
「で、その後、何やってたんだ?」
「読経だ。般若心経3回、妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五(ミョウホウレンゲキョウカンゼオンボサツフモンボンダイニジュウゴ)1回、不動慈救咒(フドウジクジュ)108回。」
「もはや、霊媒師のやることだろ。」
「まあ、それやったら、脱衣所から悲鳴があがってたな。」
「ああ、わかった、それでか。ビルから助けを求める叫びがあったのは。」
「そうそう。死人死人って連呼しているアジトの主の半泣き顔を見て楽しませてもらったな……」
「マスターってクズですね……」
「そうか? まあ、若干やりすぎたけどな。」
「ま……そんなマスターに俺は惚れたんだな。普段おとなしい人間だったマスターが、脅迫状を送られてみんなが震えている時にドS人間に豹変して、相手を蹴散らす。乙女から鬼女に豹変するがごとし。俺に告ってきたやつは結構いたけどさ……どいつも気に入らなかったな。本気で恋したのって、マスターが初めてだったな……」

 未来は、椅子に座る僕の後ろに回り、僕に抱きつきました。後ろで興奮しているような息が聞こえましたが、無視し、彼女の抱きつく腕をなでました。

「本当に、仲睦まじいんですね……」
「まあな。こいつには変態な面はあるが、心強い所がある。だから、結婚したいと思った。」
「俺にとってマスターは、ピンチの救世主だ。マスターなら普段言えないことを素直に言える。だから、気軽に相談できる。だから、ずっといたいと思ってな……」

 若干、ゆかりさんの前でイチャイチャするのに罪悪感がありましたが、それでも、未来と互いに信頼できあえる夫婦になれた幸福感がその罪悪感に勝ったのです。仕方ありません。リア充爆発しろと言わんばかりの表情を見せつけられましたが、無視しました。
 しばらくしてから、アジトに入った時に使った経帷子をゆかりさんに見せてあげました。

「これ……あの時に使った経帷子ですか?」
「そうだ。背に、名号が書いているだろ?」
「はい……しかし、なぜこんなものをマスターが……死んでからもらうんじゃないですか?」
「まあ、普通はな。ただな……中学の時に大病患って、余命1年って宣告されたから、死ぬはずだった1か月前に、五重相伝(ゴジュウソウデン)を受けたんだ。」
「五重相伝?」
「亡くなる前に、戒名をもらって、教えを受ける儀式のことだ。マスターは、マスターの親御さんの意思で受けたようだ。」
「まあ、結局、大病は完治したけどな。」
「ええええ……」
「ほんと、生きることができてよかったよかった……」
「それで……マスター。」
「ん?」
「師匠といつ結婚式を……」
「確か、高2の3月か……」
「そうだな。受験期突入前にやるってなってビビったよな?」
「だな。だけど、今やるってなってたらできなかったかもな……」
「かもな……」
「で、師匠とマスター。」
「なんだ?」「なんだ?」
「結婚初夜って何してました?」
「えっと……最初は、俺がこの家でマスターを押し倒して……」
「押し倒して……」
「マスターの顔をアヘ顔にしようと調教しようとして……」
「調教しようとして……」
「だけど、マスターがアジトの案件の時と同じドS人間に豹変して……」
「豹変して……」
「逆に俺が調教されて、メスイキしてしまった……」
「………………マスター」
「待て、今話す。ちゃんと訳がある……」
「なんですか、言い訳ですか」
「違う。その時、いきなり未来がベッドで襲い掛かってきたから恐怖で、あの時と同じく、恐怖のあまりドS人間になっただけだ……」
「それだけじゃないぞ……マスター、俺がバテた時、マスターが妖狐になってたぞ。」
「ああそれな。霊感あんまないが、実は、僕、信太(シノダ)の森の狐の子孫だから。恐怖を何回も味わうから、先祖返りを起こしたかもな。」
「え……えええええええええ!?」「え……えええええええええ!?」

 そうです。あの事件で人格が豹変したのは、守りたいという強い使命感を抱いたからではなく、実は、恐怖の極みで心理的に追い詰められたからなんです。そして、初夜で先祖返りを起こしたのは、恐らく、事件の恐怖が脳内にフラッシュバックし、自分の生命に危機が再度襲来すると無意識に察知してしまい、先祖の能力開放を未来が促したからなんだと思うのです。
 では、今日はここまで。


 

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