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少し賑やかに

 また新しい世界を創造したらしい創造主から指導を命令される。教育システムは構築出来ているので問題ないが、そろそろ指導者を纏める部署のような場所を創設した方がいいかもしれないと管理者は思う。
 現在創造主から管理者へと下りてきた指令は、それから管理者が必要そうな場所に指示を出して動かしているのだが、そろそろ実際に指導する管理者達と指示を出す管理者との間が開き過ぎてきているのだ。若い世代の中には、最初の管理者の存在を知らない者まで居るほど。
 なので、現状は間に幾人かの管理者を挟んでしまっているのだ。それではあまりにも遠すぎる。今は何とか回っていても、そんな事がいつまでも続くとは思えない。
 そう考えた管理者は、まずはその指導を一元的に管理してくれる部署をつくる事にした。そうすれば、創造主からの命令をそこに渡せば全て解決してくれる。
 本当であれば、創造主が直接そうして欲しいのだが、どうやら創造主は管理者以外とは一切連絡を取っていないらしい。もっとも、一方的なものを連絡というかどうかは分からないが。
 とりあえずそういう事で、まずは誰をそこに置くかという話になってくる。それなりに地位の在る者でなければ指示するのは難しいだろう。
 そういう訳で、管理者は第二世代を中心としてそんな部署をつくる事にした。一概に世代が古いほど偉いという訳ではないが、管理者達は成長するので、永き時を生きている方がより強い場合が多いのだ。
 それに、最初の管理者は別格としても、第二世代から第五世代と第六世代以降では能力に差があった。創造主が世界と管理者を現在の能力で落ち着けたのが第六世代からだから。
 第二世代から第五世代の間でも、世代が古いほど能力が高い。そういった能力差もあるので、第二世代を中心に据える事で、問題なく指示が出せるようになるという寸法だ。それに、第二世代は全員を管理者が直々に指導した世代でもあるので、話を通しやすくもあった。
 ちなみに、そんな成長して強大な力を持った第二世代ではあるが、それでも全員で掛かっても創造主には遠く及ばない。それぐらいの差はあった。というか、その辺りを計算して創造主は創造したらしい。なにせ、第二世代以降からは成長の速度が緩やかなうえに、成長に上限が設けられているのだから。
 管理者は早速とばかりに第二世代の全員に連絡を取り準備をしていく。若い世代のまとめ役もしなければならないので、色々と話し合いが必要そうだ。
 そうして新しい部署を立ち上げている最中にも、創造主からは次の指導命令が下る。どうも最近の創造主は、直前の世界が安定する前には次の世界を創造するようになってしまったようだ。世界と管理者の基準を定めてしまった弊害なのかもしれない。それでも外の世界の様子を鑑みながらの創造なので、数はかなり多いが、まだ何とか対応が間に合う範囲内。
 それでも急いだほうがいいかと考えた管理者は、分身体の数を増やして各方面に派遣したりと精力的に動く。最近は管理者周辺が安定してきていたので、久しぶりに精力的に動いていた。
 そのおかげか、指導に関して一元管理する部署は直ぐに完成した。後は何度か動かして調整していけばいい。
 そうして一仕事終えたところで、まるで褒美だと言わんばかりのタイミングで、管理者が創造した世界に一気に生き物がやってきた。
 狼や熊などの動物や、蛇や鰐などの爬虫類。蜂や蟻などの昆虫も益々種類が増えて、森の中が一気に賑やかになる。しかもそれだけではなく、様々な魚や貝にと海の方にも一気に数が増えていった。
 そんな風に短い間に生き物が大勢やってきたのだが、どれも同じ世界からという訳ではない。むしろ種類が異なると同じ世界からやってきた方が少ないほど。
 そして、全ては漏れなく、魔力やら神力やら秘力やらと世界によって様々に呼ばれる特殊な力によって変異した、所謂魔物と呼ばれる者達だった。これもまた、世界によって名称は異なるが。
 そもそも漂着出来るまでに外の世界で存在を維持し続けられる者となると、どうしてもそういった存在ばかりになってしまうのだからしょうがない。
 森や海や山や土やらと自然物はその存在自体が大容量なので、漂着物の大半がそれらなのは必然。そして、この世界に辿り着いている建造物もまた、特殊な部類に入った。
 でなければ、いくら保全に努めているとはいえ、何億何兆年という悠久の時の中で形を維持出来る訳がない。少なくとも、それだけ経てば何処かしらが崩れていなければおかしいのだ。一軒もそんな様子をみせない方がどうかしている。
 最近は自然物以外のそんな物が増えているので、それだけ世界の数が増え、なおかつ特殊な力を管理している世界に満たすのが管理者達の間で流行っているだろう。それともこれは指導の弊害か。
 何にせよ、生き物が増えた事は喜ばしいのだろう。人は未だに流れ着いていないので、そろそろ建物の別の利用法も考えないといけないかもしれないが。
 とはいえ、漂着物を集めているこの場所はまだまだ余裕がある。やってきた生き物も種類は多いが、数はそれぞれ群れが一つか二つぐらいなので、密度で言えばスカスカである。
 植物も成長するので、森は少しずつ外へと勢力を拡大している。海は満ち引きを再現してみたので、それで少しずつ陸地を削っていたりするしで、場所そのものも成長しているのだろう。
 管理者は今回の生き物の漂着を考え、今後はそういった方面の漂着物が増えるのかもしれないなと考える。
 そう考えたところで、管理補佐を増やしてもいいなと思った。というよりも、この一角は管理補佐に全て任せてもいいのではないかとさえ思えてきた。管理者はペットを飼うためにこの世界を創造したのであって、漂着物を管理するためでは決してないのだから。
 そういった不満の解消のためにもそうしようかなと考え、管理者は管理補佐を複数人創造していく。外から何が来るかは分からないので、個々の能力は高く、数も多めで。漂着物の誘導などは引き続き管理者が行うが。
 慣れたもので、創造の作業も早々に終えた後、管理補佐の教育も手早く終える。
 そんな日々を過ごしていたある日、とうとう管理者が創造した世界に人が流れ着いてきた。

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