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節分と厄災の…… その5

 厄災の蟹を調理してティーケー海岸でふるまったわけなんですけど、それでも処理しきれないほど大量に厄災の蟹達が残っています。
 魔法袋に入れて保存しているので傷みませんけど、さてさて、これをどう処理したもんでしょう。

 ちなみに、厄災の龍の方は順調に処分が進んでいます。 
 異常に硬くなっている肉は、スアが魔法を使用しながらすり下ろし、粉薬に調合しています。
 スアによると
「……とんでもない治癒効果がある、よ」
 とのことでした。
 で、やはり使役魔獣の肉を使った物よりも、厄災の龍そのものの肉を使用した物の方が効果が高いらしく、当面は使役魔獣の肉で作成した物を試験販売していく予定にしているとか。
 そして厄災の龍や使役魔獣の鱗の方ですがこちらはスアよりも武具屋のルアの方が大喜びしながらトンテンカンと作業しています。
 なんでも
「武具屋にとって龍の鱗を使って武具を作れるのは最高の誉れだからな」
 そう言うルアなわけです。
 脱皮した際のパラナミオの鱗を提供してはいますけど、まだ子供なパラナミオがサラマンダー化しても脱皮して回収出来る鱗の量はやはり少ないわけで、今回捕縛した厄災の龍の使役魔獣1匹から回収出来た鱗の方が多いくらいでしたから。
 で、それを伝え聞いたパラナミオがですね
「私、もっと気合い入れて脱皮します!」
 って言ってたんですけど、こればっかりは体格差とかありますしね。
 なんせ、厄災の龍の使役魔獣ってば、1匹でパラナミオの1.5倍くらいありますし。
 とにもかくにも、そんな奴らを一網打尽にしちゃったスア……ほんとすごすぎます。

 で・す・が

 世間一般的には、この厄災の龍と蟹、2匹を使役魔獣共々捕縛したのは僕ってことになっちゃってるわけです。
 当のスアが
「……目立ちたくないから、旦那様が倒したことにして、ね」
 そう言うもんですから、仕方なく話を合わせているんですけど……なんか、ティーケー海岸に僕の英雄像を建立しようって話が出てるそうで、発起人のアルリズドグさんに辞めるように、と、必死に説得してるんですけど、
「何言ってんだ、このティーケー海岸を救ってくれた英雄の像を建てなかったら、それこそバチが当たるってもんだ」
 そう言って、一向にやめる気配がないんですよね……いやはや……
 辺境駐屯地のゴルアも
「しっかり王都に報告させていただきました」
とか言ってドヤ顔してたし……なんかまた面倒なことになりそうな気がしないでもないんですけど……と、とにかく今はおとなしく時の流れに身を任せつつ、波が過ぎ去るのを待つことにしようと思っている今日この頃です。

 ただ、このおかげでティーケー海岸で行っている魚介類の買い付けがですね、
「海岸の住人皆の恩人だからな」
 仕入れ先のアルリズドグ商会会長のアルリズドグさんの一声で、いままでの価格の十分の一で取引してもらえることになったんです。
「いや、さすがに悪いですよそれは」
 そう言う僕に対して
「あ? アタシの好意が受け取れないってのか?」
 そう言ってすごむアルリズドグさん。
 で、まぁ、喧々囂々の話合いの結果、とりあえず1ヶ月この価格で取引することで決着しました。
 ファラさんは
「せっかくですもの、お受けしておけばよろしいのに」
 そう言っていたんですけど……いやいや、さすがにそれは気が引けるって。
 それに、困っている人を助けるのは当然のことだって思ってるしね。
 僕がそう言うと、ファラさんは
「なんといいますか、甘いというか、青臭いというか……」
 なんかそんな事を言いながら苦笑してたんですけど、
「……でも、そんな店長だからこそ、独身だったら、私がほっとかなかったですよ」
「またまたファラさんってば、お世辞が上手なんだから」
 と、まぁ、そんな会話もあったわけです、はい。

◇◇

 さてさて、そんなこんながあったわけですが……本店に戻った僕は改めて思案し始めました。

 えぇ、節分のことです。
 今回の騒動のおかげで、ちょっとした考えが浮かびました。

 僕が元いた世界では
『福は内、鬼は外』と言いながら豆をまいていたのですが、この世界にはリアルに鬼人が存在しますので、鬼は外、はちょっとまずいかな、と思ってたわけですけど、これをですね、

『福は内、厄災は外』

 にしてみようかな、と、思ったわけです。
 で、豆ですけど、僕が元いた世界では鬼が出た際に毘沙門天様が「大豆を投げろ」ってお告げして、それに従って大豆を投げたら鬼を撃退出来たとかで、大豆を投げるのが一般的になっていました。

 と、いうわけで、この世界で見つけていた大豆モドキ的な物を炒って小袋につめたものを販売しようと思っています。
 で、その小袋に厄災の蟹や龍をかたどったお面を付けたらどうかと思ったわけです。
 で、その役目に立候補したのが
「パパ、お絵かきならまかせてください!」
 って、元気に右手をあげたパラナミオです。
 で、パラナミオはですね、僕があげてた色鉛筆を使って頑張って厄災の蟹と龍の絵を描き上げてくれました。
 父親の僕が言うのもなんですが、

 パラナミオ、最高によく描けてるよ!

 と、まぁ、僕的にもすごく感動する逸品に仕上がっていました。
 原画はあとで額に入れて飾っておこうと思います。
 で、これをですね、魔女魔法出版のダンダリンダにお願いして大量印刷してもらいました。
 お面として使用出来るように、絵の部分の左右から帯状にした紙を伸ばしてですね、後頭部あたりで組み合わせて固定出来るように細工をしています。
 で、このお面印刷は、ちょっと硬めの紙で印刷してもらったのは、言うまでもありません。

 こうして、節分セットの準備が出来上がりました。

 で、ついでに恵方巻きも作ってしまおうと思った訳です。
 僕が元いた世界でも、近年になっていきなりに普及した感じが強い恵方巻きですけど、まぁ、この世界でやってみるのも一興かな、と思った訳です。
 で、節分がですね、厄災退散祈願的な意味合いで売りだそうとしているわけですので、恵方巻きもそれにならいました。
 具体的にいいますと……中の具にですね、厄災の蟹の蒸した身をいれたんです。
 で、食べる方角に関してはですね、スアに確認したんですけど、この世界には恵方みたいな物は特に存在していないそうなんですよね……なので、ここは開き直って、
「厄災達が出現した南の海の方角を向いて食べましょう。無言で願い事を思い浮かべながら丸かじりすると厄災払い出来るとともに願いがかなうかも」
 って感じでキャッチフレーズを考えてみた次第です。
 で、ツオの月の3日をですね、勝手に「セツブンの日」に認定して、

『ツオの3日「セツブンの日」は、豆まきをして恵方巻きを食べよう』
 って文字の入ったポスターを作りました。

 僕が厄災のお面を被って、そんな僕に笑顔のパラナミオとスア、リョータが豆を投げている、そんなポスターに仕上がっています。
 当然、これも魔女魔法出版で印刷してもらいました。
 テトテ集落用に、多めに印刷してもらったのは言うまでもありません。

 で、このポスターを各店舗に掲示して、予約の受付を開始したところ一斉に予約注文が殺到してきました。
 意外だったのは、こういった行事には疎いはずの魔法使い集落の皆さんがですね、こぞって3号店に予約を入れてきたことでした。
 どうも、コンビニおもてなし防衛軍として厄災魔獣退治に参加してくださってた魔法使いの皆さんがですね、
「あの店の店長さんが厄災魔獣を一網打尽にしたんですよ」
「その店長さんの店が売り出した物です、御利益ありそうですよ」
 そんな感じで噂をしまくってくれたおかげのようでして……いやはや……
 で、ティーケー海岸にあるおもてなし商会にも予約殺到状態で、ファラさんが嬉しい悲鳴をあげている次第です。
 そんなわけで、まだ予約開始して数日だというのに、セツブン関連商品の予約がすごいことになっているわけです、はい。

 と、まぁ、そんなわけですけど
「スア、本当に僕が身代わりのままでいいのかい? 僕としては本当のことを公表してスアの功績をみんなに知ってもらいたいんだけど……」
 その夜、スアの研究室のベッドに腰掛けている僕は、スアに向かってそう言いました。
 ですが、スアは、そんな僕に向かって顔を左右に振ると、
「……これでいい、の……これがいい、の」
 と、嬉しそうに笑いながら僕の横に腰掛けました。
「そうは言ってもなぁ……」
 そう言う僕の口を、スアが右手でそっと押さえました。
「……じゃ、ご褒美、ください」
 スアはそう言うと、僕に向かって目を閉じました。
 僕は、そんなスアに唇を合わせると……おっと、ここからは黙秘しますよ。

 ちなみに妊娠安定期なスアですけど、負担にならないように配慮したとだけ申し添えておきます、はい。

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