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年の初めのご挨拶よぉ その2

「はいリョータくん、おばあちゃまはこっちでちゅよ~」
 朝、いきなりやってきたスアママのリテールさん……僕からすればお義母さんなんですけど、そのリテールさんってば、しっかり歩くようになったリョータを前にしてメロメロ状態です。
 で、リテールさんが喜んでいるのをリョータも理解しているらしく、
「ばーば」
 と、満面笑顔で言いながらリテールさんの方へ歩いていってるわけです、はい。
 しかしまぁ、リテールさんのこの姿だけを見てたら、とてもこの世界最大の出版社である魔女魔法出版の社長だとは想像出来ません。
 でもまぁ、こうして会いに来てくださるのは本当に嬉しいわけです。
 なので、リテールさんがうちに滞在中されてる間は、社長さんとしてではなく、スアのおかあさんとして、僕のお義母さんとして応対させていただこうと思っている次第です。
 僕がそんなことを思っていると、僕の横にスアがトコトコと歩み寄って来ました。
「……旦那様のおかげ……ママとこうして和解出来た……」
 そう言うと、スアは僕にそっと寄り添って来ました。
 僕は、そんなスアにニッコリ微笑むと
「何言ってんだ。僕はただのきっかけだって」
 そう言って、スアの肩を優しく抱き寄せました。
「……旦那様……ありがと」
 そう言いながら、スアってば僕の方を向いてですね、目を閉じて……って、おいおい、目の前には今、リョータと遊んでいるリテールさんが……
 僕が、内心で焦っていると、
「は~い、リョータくんもばーばも見えない見えな~い」
 なんかそんなリテールさんの声が……
 で、見て見ると、リテールさんってば、リョータの両目を自分の手で押さえつつ、自分もそっぽを向いているんですよね。
 ……まぁ、なんていうか、あからさまな気の効かせ方なわけですが……まぁ、その好意はありがたく頂くとして、僕は、スアの肩を抱き寄せると……

 ちゅ

◇◇

 で、この日も当然仕事はありますので、僕はリテールさんを交えてみんな一緒の朝食を終えると、すぐさまコンビニおもてなし本店へ戻りました。
 予想外のリテールさんの来訪だったもんですから、今日の弁当作成作業はバイトの魔王ビナスさんに丸投げになってしまったんですけど、
「はい、無事終えていますわ」
 和装たすき掛けの割烹着姿の魔王ビナスさんは、そう言ってニッコリ微笑んでくれました。
 ……なんといいますか、ホントいい方をバイトで雇えたもんです、はい。

 で、その後は、いつものように営業を開始。

 今日も開店と同時に、弁当やパンを買い求めるお客さんがドッと押し寄せてきました。
 コンビニおもてなしは、開店直後とお昼前後が一番混雑します。
 ですので、この時間帯は、3つあるレジをすべてフル稼働するのが常です。
 僕・ブリリアン・魔王ビナスさんの3人がレジを行い、ヤルメキスとテンテンコウ♀はその補佐を、そしてルービアスが店内のお客さんの誘導を行います。
 で、混雑している時間は、スアが自らのアナザーボディを店内に展開してくれていて、品切れになった商品棚に、すさかず商品を補充していってくれます。
 スアは、これを薬品作成や、リョータの相手をしながら……今日なんかは、リテールさんの相手をしながら行っているんですから、ほんと恐れ入谷の鬼子母神です、はい。

 ちなみに、オネの2日、今年最初の営業から販売を開始したお餅ですが、なかなか好評です。
 初日にテトテ集落の皆さんに来てもらって餅つきを実演してもらったおかげもあって、今日もよく売れています。
 おもちは6個セットで販売していまして、中には『美味しい食べ方』を記したイラスト入りの紙を同封しています。別にお雑煮用の具材をセットにした物なんかも販売しています。
 で、その裏面には注意事項として『喉に詰まることがあるので、よく噛んで食べること』と、イラスト入りでしっかり明記しておきました。
 この紙なんですが……実はスアによってちょっとした細工がほどこされています。
 この紙が存在している屋内で、万が一誰かが餅をのどに詰まらせた場合、この紙にかけられた付与魔法によってその症状を解消してくれる仕組みになっているんです。
「っていうか、そんな魔法をわざわざかけてもらって大丈夫なのかい?結構大変なんじゃ……」
 僕がそう言うと、スアは
「……別に、朝飯前だ、よ」
 そう言ってニッコリ笑ってくれました。
 スアがそう言ってくれるのなら、まぁ大丈夫かな、と思っていたのですが……それを伝え聞いたブリリアンは目を丸くしていました。
「そ、そんな超高度な付与魔法……さ、さすがは師匠、すごすぎますよ」
「あぁ……やっぱりそうなの?」
「当たり前です店長!この魔法はですね、上級魔法使いでも……」
 と、まぁ、この後ブリリアンによるスア賛歌独演会が延々続いていったわけですけど……なんていうか、ホントにスアってばすごいんだな、と再認識するとともに感謝しきりだったわけです、はい。

 で、その日の営業を無事終えた僕は、店の掃除と後片付けをしていきます。
 そんな僕の元に、転移ドアをくぐって4号店の店長補佐ダークエルフのクローコさんがやってきました。
「店長ちゃん、ちょりっす!今日もおもてなし酒場、がんばっちゃうね」
 そう言いながら、舌だし横ピースをするクローコさん。
 ……僕と同い年で、そのポーズはどうなんだろう、と思わなくもないわけですけど、まぁ本人が気に入っているご様子なので、止めませんけどね。
 で、本店の営業終了と入れ替わるように、本店に併設されているおもてなし酒場の営業が開始になります。
 このおもてなし酒場は、2階が宿屋になっています。
 で、1階の酒場部分はクローコさんを中心にして、昼間は狩りに行っていたイエロとセーテンの3人で切り盛りしています。
 2階の宿屋スペースは、2号店に勤務しているシャルンエッセンスの元メイド達が交代しながら勤務をしてくれています。
 この宿には温泉が併設されているもんですから、ガタコンベの中でもちょっとした名物になり始めているんですよね。
 今日も、おもてなし酒場が開店するやいなや、まず宿屋にチェックインする冒険者らしいお客さん達が殺到していました。
 で、そんなコンビニおもてなしの様子を、遊びに来ていたリテールさんはリョータと一緒にあれこれ見て回っていました。
 ちゃんと邪魔にならないように気を使いながら、
「ほら、パパ頑張ってますねぇ」
 そんなことをリョータに語りかけながら嬉しそうに微笑んでいるリテールさんの様子を見ると、僕もなんか嬉しくなってくるんですよね。

 で、そんなリテールさんに相手をしてもらいながらリョータもすごく嬉しそうです。
 パラナミオも、そんなリテールさんと一緒に歩いているのですが……よく見ていると、

 何でもないところで蹴躓いて転びそうになったり
 何でもないところでいきなり滑って転びそうになったり

 そんな風になっているリテールさんを
「お婆さま危ないです!」
 そう言いながらことごとく事前に助けているパラナミオなわけでして……えっと、パラナミオが孫ですよね?リテールさん……
 でもまぁ、そうやってパラナミオに助けられる度に、リテールさんってば
「パラナミオちゃん、まぁたおばあちゃま助けてもらっちゃったわねぇ、ありがとう」
 嬉しそうにそう言って、パラナミオを抱き寄せているわけです、はい。

 なんか、その姿を見ていると、やっぱりこの人がこの世界最大の出版社の社長だとは、とても思えないわけです、はい。
 でも、こんなお婆さんの方が、僕も嬉しいですのでいいんですけどね。
 そうは言いながらも、見た目はほとんどスアと変わらないロリ婆様なわけですが……
 と、僕がそんなことを思っていると、リテールさんは僕に向かってニッコリ微笑みました。
「あらあら婿様。私はまだまだ若いですわよ?なんなら試して見られますか?」
 いきなりその顔に艶っぽい笑顔を浮かべながら僕にしなだれかかってくるリテールさん。

 ですが

 そんなリテールさんと僕の間に、即座にスアが転移魔法で割り込んで来ました。
 で、スア……リテールさんに向かってニッコリ微笑みます。
「……ダメ」
「だめ?」
「……うん、ダメ」
「そう?……ステルちゃんも弟か妹、ほしくない?」
「……ほしくなくはないけど……余所をあたって」
「どうしても?」
「……どうして、も」

 なんか、僕を目の前にしてすごい会話が飛び交っていますけど……まぁ、僕はスア以外の女性を相手にするつもりは絶対にありませんしねぇ……愛していますから。
 そう、僕が思った途端に……リテールさんは、自分の額をパチンと叩きまして、
「あらあら、これはご馳走様」
 頬を少し赤く染めながらそういいまして、で、一方のスアもまた、その頬を真っ赤に染めながら
「……もう旦那様ったら……私も愛してる、よ」
 そう言いながら照れり照れりと体をくねらせていました。

 なんか、2人に思考を読まれていたみたいですけど……まぁ、読まれて困ることなんて考えていませんので、別にいいんですけどね。

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