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初出勤! アクメ自転車の秘密!

 ジン子が冴渡について行くと、そこには自転車が置いてあった。サドルのところにバイブが突き立っている。
「これは……?」
「アクメ自転車だ。その昔、ソフトオンデマンドというメーカーが開発した企画AV用の自転車だ。それを知り合いのアダルトグッズ会社の社長に頼み込んで再現してもらった」
「わたしのために?」
「ぜひ通勤に使って欲しい」

 しばらく沈黙が続いたがM探偵に拒否などという選択肢はない。ないが通勤に使う意味も分からない。

「わかりました」
「お祝いだ。デビューおめでとう」
「冴渡さん……」

 冴渡の好意がこれほどまでに羞恥に執着している事にジン子は恐怖すら覚えた。そしてふと頭の中に疑問が浮かんだ。「実はわたしには女性としての魅力が無いのだろうか?」
 半開きになった捜査一課の窓から夕焼けが差し込んでいた。

 翌日、ジン子は冴渡から貰ったアクメ自転車でDNNNの撮影スタジオに向かう事にした。まだ3月の肌寒い風がある為、自宅でコートなどを着込んだジン子は、自転車の前でパンティを脱ぎ自転車にまたがる。
 すでに乗り込む前に周囲の視線などで完全に潤いを満たしていたジン子のトンネルは、サドルのバイブをすんなり受け入れた。
 途端、エンジンがかかったような音がしてバイブが振動する。
「ああ……すごい……」
 全く冴渡は鮮烈なプレゼントをくれる。
「これじゃスタジオに行けない……」
 ジン子がバイブの振動に身もだえ困っていると、ハンドルの中心部からモニターが出て来る。
「おはようございます。M探偵。これより目的地を目指します。バイブの振動はいかがですか?」
「え? 喋るの? この自転車」
「最新鋭のナビゲーションシステムです。タッチパネルでナビとバイブの設定変更が可能です。それでは良い振動を」
「すごい……さすが冴渡さん」
 ジン子は早速モニターのナビにDNNNのスタジオを設定し出発した。
 このアクメ自転車とは、ナイトライダーのような会話するナビを備えた最新鋭の自転車だったのだ。
「きっと冴渡さんの事、ほかにも色々な機能があるかも知れない」
 ジン子はそんな事を考えながら徐々に振動するバイブに心奪われ始めた。

 都内では通勤に自転車を使う者も多いが、その中でジン子の自転車はひときわ視線を集めた。
 しかし、ジン子は今までこれほどの羞恥を受けた場合、ある種の能力が出ていたはずだ。やはり、自分の中で何かが狂っている。その原因も解決法も分からない。これでは冴渡がいくらジン子を羞恥しても事件解決に向かえないのではないか。ジン子はうすうすそう思っていたが、そのことを冴渡に言えないままでいた。

 DNNNのスタジオではジン子のデビュー作の準備が進められていた。内容としてはよくある新人デビュー作と同じく、午前中はインタビュー、初脱ぎでのオールヌード、そのまま汁男優のアソコを弄び射精させる、その後、休憩を挟んでベテラン男優との初エッチとなる予定だった。午後からはジン子と相談の上、キモおじさんとのプレイか3Pという事になっていた。
 しかし、現場に着いたジン子はガランとしたスタジオに異様な雰囲気を感じていた。

「何! 涌嶋が決裁を通してない!?」
 亀吉の怒号が聞こえてきた。
「はい。社長が新人のデビュー作にしては制作費が高すぎると……」
「会長の俺がゴーサインを出す! すぐ準備に入れ!」
「は、はい!」 
「ったく……涌嶋のやつ何を考えてるんだ……」
 ジン子がスタジオに入ると、撮影を見学に来たであろう亀吉とスタッフらしき人物がいるだけでセットも何もない。
「確かにコストを意識しろとは言ったが……」
 亀吉は困惑した表情のまま、そろりと顔を出したジン子を見つけた。
 亀吉は笑顔を見せ、
「すまない……こちらの手違いで。メイクルームで少しだけ待ってくれないか。男優もセットも何も出来てないんだ」
「何かあったんですか?」
「……いや。なんでもない。ただのミスだ」
 亀吉は早々にスタジオを後にした。
 ジン子は去っていく亀吉の背を眺めていた。内ももをしたたる愛液が少し乾き始めていた。

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