バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

三章 転換の扉(三話)

これは遡ること4カ月前の話だ。

異世界
「谷野さん!!」
執事が谷野の肩を掴んで揺さぶって呼んでも応答がなかった・・・。しかし、
「谷野さんは生きてるよ。」
白髪が特徴的な執事がそう言って通りすぎて、ナコの安否を確認しようとナコに近付いた。すると、
「ナコ様・・・。」
白髪の執事が黙りこんだ。
「ナコ様も倒れてしまいましたが外傷はないので大丈夫だと。」
執事がそう言うと、白髪の執事は首を横に振った。
「ナコ様は、谷野さんの『身代わり』になったのですよ・・・。」
「それはどういう・・・。」
急な情報が多い為に言葉に困った。すると白髪の執事が説明し始めた。
「確かに谷野さんは一回死んだ。しかし、ナコ様がその致命傷を庇ってらっしゃった。ということだ。」
(ナコ様、庇ったのですか?私達はどうすれば・・・。)
執事は泣き始めた。何年も全てを捧げ、信じてきた主人が最後がこんな辛いものだとは・・・。
「しかし、なんで・・・。」
「それほど谷野さんに価値や力を感じたとしか思えません。」
執事が言い終えると白髪の執事が執事の頭に手を置いて言った。
「これで私達の仕事は終わりだ。タメ語で話していいよ。」
「わかった『父さん』。」

谷野は意識が戻るとベッドから起きた。当然だが自分は死んだはずだと混乱した。情報が欲しい谷野はとりあえず部屋から出ると、通りかかったメイドが気がついて慌てて中央の広間に走って行った。谷野はそのままメイドに着いていって中央の広間に来た。すると、白髪の執事が近づいてきた。
「あの谷野さんですよね。」
白髪の執事の質問に谷野は素直に頷いた。
「一応自己紹介しておきましょう。私は執事長、名前は伏せておきます。」
そう言うと執事長は右手を右にやってお辞儀をした。(それはそうとしてなんで名前を伏せたのだろうか。)
谷野は考えているが分かるわけもなく間が空いた。考え込んでいる谷野を見て執事長は少し不思議そうな目をした。
「教えない理由言いましょうか?」
「出来ればお願いします。」
当たり前だが聞いた。
「親しい仲ではないからですよ。」
(ん?どういうことだ?)
結局分からなかったが、無理やり飲み込んだ。とりあえず何があったか聞いた。そもそも防御力1の時点で即死は確定なのだが、死ななかった。その理由を知りたかったのだ。
「あの時なにがあったんだ?」
「話が長くなるので座ってください。」
すると谷野に椅子に座るよう勧めた。
「あの時何があったか一通り言いましょう。
1.暗殺者が襲ってきた。
2.しかし、間に合わなかった。
3.谷野が私の娘を庇った。
4.谷野が刺されて死んだ。
5.暗殺者が谷野の庇ったことにびっくりしている隙を私の娘が衝いて倒した。
6.私達が駆けつけた。
こんな感じです。」
谷野はどこまで知っているか大体の人は分かっているだろう。
「2までだ、というかその後から記憶もないぞ。」
谷野の回答に執事長はびっくりした様子だった。
執事長は少し間をおいて言った。
「だが、なんで記憶もない状態の中で庇えたのだ?」
「確かにそれがわからないな。」
しかし谷野がわからなければ誰がわかる、そんな様子だった。
(でも意識はなかったんだ。いや、意識がなかったからか?いや流石にそれはない。意識がないのに体が動くものか。)
悩めば悩むほど迷宮入りしていく、そんな様子だった。すると執事長が一咳して言った。
「谷野さん少しの間この館に留まって考えるのはどうでしょう。第一体も疲れているでしょうし、のんびりしながら考えた方がいいと思います。」
谷野は少し悩んで、
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。」
すると、執事長は立って言った。
「私は何かとやることが多いので谷野さんの世話は副執事長が担当します。なので何か困った事があったら副執事長にお申し付けくださいませ。あと、何か思い出したら私を呼び出しても構いませんのでよろしくお願いします。それでは失礼します。」
執事長は颯爽と去っていった。
(まあその通りだ主人が死んだのだからやることも多いと思うしな。)
それから谷野は色々と整理するために部屋に戻った。すると部屋に、
「あっすみません、いまベッドメイキングしている途中で・・・。」
執事がいた。谷野は慌てていった。
「い、いいですよ。ちょっとしたらまた戻るので。」
その言葉を聞いて執事が近くに寄ってきた。
「あの、谷野さんに少し聞きたい事があるのでいいですか?」
(・・・この執事よく見たら女性じゃないか。そういえば、執事長さんが俺の世話を副執事長が担当するって言ってたな。それがこの女性執事ということか。)
「谷野さん、もしかして私が女性だって気になりましたか。」
(まあ気になるよな。)
そう考えていると副執事長が座る事を勧めてくれた。そして椅子に腰掛けると副執事長が一息ついて言った。今思えば『これが始まり』だったと考える。

続く
















しおり