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父さんからのメッセージ

俺が、この田舎に引っ越してきて、3ヶ月になる。
夜になると、道は暗いし、コンビニもないし、やたら虫はでかいし、最悪だ。
クラスのやつらなんて、今時、半ズボンなんてはいているし、だせーやつらだ。
しかも、訛って何を言ってる分からない。

俺は、東京から来た、しかもクラスでも勉強は出来るし、スポーツも出来るし、おまけに顔もいいし、女からもモテてきたんだ。

どうして、こんな俺が、こんな田舎に来なきゃいけないかって?
よくある話、親の離婚だよ、ここは母さんの実家。

俺はあまり父さんと遊んでもらった記憶が無い。
いつも、深夜に帰って来ては不機嫌だった父さん。
父さんと母さんは、お互いにどなりあってケンカしては、母さんはよく泣いていた。

「そんなに辛いなら、早く離婚すれば良いよ」って、俺が言ってしまったから、それが本当になってしまった。

俺は、母さんの味方でいたくて、いつだって、母さんを守る男でいたい。
だから、今、こうして、こんな田舎にいる。

別れ際、父さんは、ラジオをくれた。
今時ラジオなんてって、思ったけど、これが父さんと今でも、唯一繋がっているような気がしてさ。
寂しい訳じゃないだ、ただ・・・嘘、本当は寂しくてたまらない。
俺が、あんなことを言わなければ、まだどんな形でも、家族が繋がっていたかも知れないと思うと、もうたまらなくなる。
そんな日には、俺は、このラジオを聞く。

「さぁ、東京 から全国へお届け、今週のお便りいってみようのコーナー」。
「テーマは、大切な人へ届け!でしたね。」 明るいノリの男が陽気に、音楽にのって喋っている。
俺は、なんとなく、コーラを飲みながら聞いていると、
「今週は、東京都の聡の父さんさんからのメッセージが届いています、離婚で離ればなれになった息子さんへ、聡君、聞いているかな、さぁ、いくよ」 俺は思わず焦った、これってまさか・・・
「聡へ、俺はお前が産まれた時、本当に嬉しかった、この小さな命をどう守ろうかって
、何不自由なく育てる為に必死で働いてきた。お前が俺の全てだ、俺は生涯お前の父さんだよ。」
短いけど、照れ屋で、頑張り屋で、不器用で、本当は優しい父さんらしい言葉。

俺も、父さんに会いたくてたまらない、涙と鼻水で、もう顔がぐちゃぐちゃだ。
俺たちを養うために、父さんがどんなに自分を犠牲にして頑張っていてくれたか、それなのに俺は・・・ごめんなさい、父さん。

3ヶ月ぶりに、父さんに電話した。
「俺も、俺の父さんは、父さんだけだよ。」長い沈黙と、お互いの鼻をすする音だけが響くけど、こんなに父さんを近くに感じられる。
「ありがとう、母さんを頼む、夏休みに会おうな。」
「ありがとう、父さん、俺、ごめんなさい、俺のせいで、家族が壊れたのかも。」
「聡、聡のおかげで大事な気持ちに気づけた、距離じゃない、金じゃない、お前達の幸こそが大事な事だ。」
俺は、堪えることが出来なくて大声で泣いた、泣き止むまで、父さんはずっと繋がっていてくれた。
散々泣いて、体は疲れているけど、心はこんなにも温かくて、眠りに落ちた。

翌朝、妙に眩しい朝日が出ている、通学路の途中の海に反射して輝いている。
目の前には、ださい半ズボンのやつらがいる。
「おはよー。」と俺が声をかけると、
「おう、一緒に行こうぜ」だって。
単純だな、いや、純朴とも言うなと思う。
これだから、田舎のやつらって悪くないよな、久しぶりに、俺、今心から笑えている気がする。

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