6話 ミカンはお好きですか?
麻衣と美憂がこちらに向かって歩いてくる。
二人とも手にはバレーボール程度の大きさの黄色い物体を抱えてる。
「ねぇ、見て見て! でっかいミカンがあったよ」
「麻衣、燥ぎ過ぎです、私達は遭難してるんですよ?」
「でもでも、これから冒険が始まると思うと、ワクワクするぞ」
なんか、どこかで聞いたようなセリフだな…あえて聞かないが。
「瑠偉ちゃん、みかん食べる? おいしいよ?」
「待て、待て、麻衣。食べたのか?」
「ぇ? 駄目だった?」
「私も食べたけど、なんで駄目なんだ?」
麻衣と美憂は不思議そうに俺に問いかける。
「お前ら話を聞いてなかったのか? ここは地球じゃないんだぞ?
呼吸はできたが、見た目がミカンでも物質の分子構成が地球と同じとは限らないんだぞ? つまり、地球上に存在しない毒がある可能性があるわけだ」
「大丈夫、大丈夫、私の胃腸は結構丈夫だから、鍛えてるし」
美憂、やっぱりお前は脳筋なのか?
しかも、どうやって胃腸を鍛えるんだ? 下痢と嘔吐を繰り返すのか?
瑠偉を見ると、俺を凝視している。
「今、<やっぱり脳筋なのか>って思ったでしょ? 正解です」
「ちょ、瑠偉、ひどすぎるよ」
「とりあず、ラモスは俺の心を読むな」
ラモスと言う言葉に素早く反応した瑠偉はすかさずペンを握りしめ、俺の太ももめがけて振りかざす。
「うおぉぉおい、な、なにすうんだおっ」
俺は素早く後方に移動し回避する、また噛んだし・・・
「次、私をラモスって呼んだら、太ももにペンを刺します」
「それは、行動を起こす前に言うセリフだぞ? 好きに呼んでいいって言ったはずだが・・・」
瑠偉と言ったらラモスだろ、おそらく幼少のころに言われたのだろうか。
それがトラウマになっているかもな。
「瑠偉と呼んでください」
「わ、わかった・・・そんなに睨むなよ」
「地雷を踏みましたね、そのあだ名は禁句ですよ、兼次ちゃん」
「麻衣、ちゃん付けはやめてくれ」
「織田、そのミカンもどきの成分構成を解析できますか?」
「分子構成自体は見れるけど、たんぱく質だけでも数千万種類あるんだぜ? 糖だってそう、ビタミン類もそうだ。結局、その分子構造が何かを知ってないと結論は出せないな、単一原子の塊なら簡単だけどな」
「そうですか・・・」
「まぁ、大丈夫だ。墓は作ってやるから安心して死んでくれ」
「えぇぇぇぇぇ、助けてくれるんじゃないの?」
「アフォ言え、前も言ったろ。俺の力は万能じゃないんだよ、知識がないと何もできないんだよ、まぁ何となくできるものも少しあるけど。
とりあえす、治癒治療系は出来ないから。軽率な行動はとるなよ?
ただし、川の水はそのまま飲んでも大丈夫だぞ、生命は存在しないしな、当然ウィルス・バクテリアもだ、お腹を壊す心配はない」
「本当に生き物は居ないのか?」
「美憂、君たちが花摘みに行くとき、俺は止めなかったろ? 何もいないから安全と分かってたからだ」
まぁ実際は気づかなかった、だけだがな。
「と言うことは、Gもいないのか?」
「ああ、いないぞ! でも飛行機の中にいるかもな? でも一旦真空になったし全滅したじゃないかな?」
「兼次ちゃん、Gの凄さを理解してないでしょ? Gは火星でも生きていけるんだよ?」
それ、漫画の話だから・・・・
「とりあえず、俺はかなり力を使って疲れたから寝るぞ、水はいいが、その他の物は口にするなよ? あとは、あんまり遠くに行くなよ? 俺は真剣に探さないからな、放置するぞ? よし、解散! 自由行動だ!」
「兼次ちゃん、言葉に優しさが足りないよ・・・・」
なんかさらに疲れたな・・・