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「なにをしたんだ?」
百道が、オトネに尋ねる。
「これが、オトネの能力なのですます」
「は?」
百道が首を傾げる。
「まぁ、説明する必要はないですますよ?」
オトネが、そう言って笑顔を見せる。
「そうだな」
百道もそれに納得する。
「だが、どうして逃げなかったんだい?」
セロが、百道に尋ねる。
「俺は自分より弱いやつからは逃げない」
「でも、自分より弱い人は殴らないんだよね?」
「ああ」
百道が、得意気にうなずく。
「じゃ、負けるんじゃないのかい?」
「ああん?俺がこいつに負けるっていうのか?」
百道がセロを睨みつける。
「だってそうだろう?
自分より弱い人には手も足も出さない。
攻撃も避けない。
だったらいずれ負けるじゃないか……」
「あー」
百道は深くは考えなかったのかセロの言葉にうなずいた。
「それもそうだな」
「あーあー」
すると別の方向から赤いスーツの男が現れる。
「誰ですます?」
オトネが、そう言うと同時に赤いスーツの男が一瞬でオトネの背後に移動した。
そして、ゆっくりとオトネの首筋を撫でた。
「俺は短気だからよう。
このきれいな顔をズタズタにしちゃうかもだぞ?」
「なにを言って……」
セロが、そこまでいうと男はセロの背後に移動した。
そして、セロの背中に一撃蹴りを浴びせた。
セロは、そのまま前へ倒れる。
「誰だテメェ!」
百道が、男の肩を掴む。
「お前は、自分より弱いやつは殴らないんじゃなかったか?」
男が笑う。
そして、百道の腹部に肘を当てた。
「ぐ……」
百道は腹部を押さえてうずくまる。
「とりあえず、この坊やは俺が預かるぞっと」
男は、そう言って健太の体を持ち上げる。
「お前は、そのエリートさんの仲間かい?」
セロが、男に尋ねた。
「仲間……ってか、こいつはウチの大事な商品なんでね。
知っているかい?コイツは議員の息子なんだ。
わかるかい?コイツを使えば国からのお金がわんさかさ」
男は、そう言って軽くジャンプすると姿を消した。
「なんなんだ?アイツ……」
百道が、顎を撫でながら小さく呟いた。
「赤いスーツ……
コード893の人ですかね」
オトネがそう言うとセロがうなずいた。
「多分、そうだろうね……
やっかいなやつに引っかかってしまったな」
そして、セロはため息をついた。