ボクが赤鬼になって
~1週間前~
「髪型よし!服装よし!朝ごはんよし!目的地も⋯よし!!」
ついに今日からボクも地獄で鬼として働かせてもらえるんだ!!しかも、ずっと憧れてた赤鬼に!!
鬼になるために今まですごく努力した。勉強、体力作りはもちろん、家事全般もできるようになったし、秘書検定も受けた!
いろいろなスキルを手に入れた代わりに、真心や情、それとかつての友人を失った。でも、構わない。地獄に情なんか持っていったら仕事に支障がでるし、友人とはどうせ会うことはないのだから。
「⋯行ってきます、父さん」
ボクの父も元赤鬼。7年前に失踪して、先月遺体が発見された。でも、その頃には何があったのかは興味が無くなっていた。
そうこうしている間にもう時間だ!
俺は電車に飛び乗り目的地へ向かった。
ちなみにボクの住んでいるここはもちろん人間界ではない。ここにいる者は皆、人間でも、妖怪でも、はたまた神でもない《何か》なのだ。ここは、施設がかなり充実していた。大学も多くて、ボクはこの街から出ることなく今まで過ごしてきた。他のとこがどうなっているのかなんて興味ないからね。
街の紹介をしているうちにボクは目的地に到着していた。
「ここが⋯地獄⋯」
ボクが入口で突っ立っていると一人の鬼がボクのとこに来た。
「もしかして、君、今日から地獄に配属される赤鬼くん?えっと⋯」
「はい!はじめまして!リクと申します!それと、ちなみにボク、女です」
「そうかそうか、よろしくねリク!僕はアイ!一応僕は男⋯」
見るからに彼は男の子というより、男の娘だろう。
「一応、受付をしているんだ。僕は見ての通り青鬼!受付は主に青鬼の仕事だからね」
「は、はぁ⋯あの、閻魔さまは」
「あ、そうだった!ごめんね、話長くなっちゃって。まず、閻魔さまの前に我らが地獄の隊長と副隊長に会ってもらうからね。案内するよ、ついて来て!」
「はい!」
「⋯へぇ、君あの街から来たんだね!あそこはいかにもニュータウンって感じだよね!僕もたまの休みに行くんだ!」
「そうなんですね!ちなみにアイ君はどこ出身なの?」
「⋯⋯⋯僕は⋯⋯村なんだ。多分今は廃村だけどね。僕ここにいる期間長くて、そろそろ200年だから、故郷のことあんま覚えてないんだ」
「えぇ!大先輩じゃないですか!!」
「地獄の200年なんてあっという間だよ!あと、僕のことは呼び捨てでいいからね!」
「はい!」
「あ、ここだよ!じゃあ、僕はこれで!」
「ありがとうございました!」
地獄の鬼はもっと怖くて、硬いイメージだったけど、すごくフレンドリーな鬼もいるんだな