第二十七話
「オヨメちゃんと結婚できないなんて、モモ一生の不覚だよ。結婚すればモモの胸でスリスリし放題というオヨメちゃんの大願が、自分の巨乳に聞いてやる状態になっちゃうよ~!」
「ちげーだろ!自分でそんなことをしてどこが楽しい?ちょっとだけ、やってみるぞ。・・・あはん。」
大悟は自分の胸に聞くという行為の危険さを察知して、即座に動きを停止した。
「こうなったら、一休さんモードにジョブチェンジだよ!」
『ポク、ポク、ポク、ポク、ポク。チーン。』
「桃羅。いい解決策がひらめいたのか?」
「うん。任せてよ。民法では、兄妹は結婚できない。でもウチの家系にお姉ちゃんはいないから、民法上の問題はなく結婚できるよ。モモのバラ色の未来が百合色に染まるだけの安心設計だよ。『オヨメ姉ちゃん』。」
「バカやろう!女の子同士でもいいと言うのか?」
「モモの心はウチのお風呂ぐらい狭いけど、お兄ちゃんと一緒に入れる容量には十分だよ。この隙を逃さず、超速ハグ!タップン、タップン。女の子同士も好感触だね。」
「こら、抱きつくな!わけがわからねえ。」
「ちょっと、あんたたち。いつまで茶番演じてるのよ。」
大悟と桃羅のコント?を黙って聞いていた楡浬がしびれを切らして、大悟の右横に出てきた。桃羅は、大悟にハグしたまま、ロボットのような精密な動きで、顔の向きを左45度ジャストに移動。
「クソ神の胸が萎んでいる!台風が温帯低気圧になってしまったんだね。憎らしいオッパイの化けの皮が剥がれたよ。」
「神様に対してずいぶんな物言いだわ。神痛力でお仕置きしたいところだけど、お賽銭も切らしちゃってるから、あんた、命拾いをしたわね。その悪運に感謝しなさい。」
「神様だって?ニセモノオッパイで取り繕う、インチキな新興宗教信者だよ。変な宗教グッズなら買うつもりないからね。」
「兄妹は変人ヘンタイなところがよく似てるわね。ここに神の社を構えるのは苦痛だわ。でもやむを得ない事情があるから、いてあげるんだから、ありがたく思いなさいよ。」
「何言ってるんだよ。インチキ神はここを出て、そのドッグランができそうなシベリア大平原で凍えていればいいよ。」
「無礼千万だわ。その無駄な脂肪の塊を早く食用油にしなさいよ。少しは地球環境破壊を防げるわよ。」
「なにを。この平原神!」
「なによ。この蛮婦!」
桃羅たちの睨み合いが続いたが、ふたりの間に大悟が割って入った。
「止めろ、桃羅。こいつは神様だけど、なんの力もなくて、人間以下の能力だけどな。そういう残念な神様だから、ここに置いてやってくれ。」
「オヨメ姉ちゃんは賞品なんだから黙ってて。」
「賞品なんていいものじゃないわよ。こいつはアタシの馬嫁下女なんだからねっ。下女就任祝いにこのリボンをあげるわ。これで主従契約成立よ。」
楡浬は大悟に白いリボンを渡し、大悟は長くなった髪の後ろで結んだ。
「オヨメ姉ちゃんはあたしの結婚式引き出物なんだよ。」
「オレはモノ扱いか?よし。じゃあ、モノとしてモノ申すぞ。モノのからだを治すのもこいつしかできないんだ。だからこの楡浬をここに置いてやってくれ。頼む、桃羅。」
「・・・。それじゃあ、お姉ちゃん。からだが治ったら、モモの旦那になってくれる?」
「旦那?オレは、元は桃羅の兄、今は生物学上の姉。すでに嫁呼ばわりされている。しかして、その実態は旦那だと?」
「さらにアタシの下女であることを忘れないように。」
「どうせ、このままじゃ、生涯一姉ポジションだ。将来旦那になったところで、不幸指数の二乗には及ぶまい。オレは元兄、馬+現姉+嫁+旦那+下女王になってやる!」
「すごいよ、オヨメ姉ちゃん。」「すごいわ、馬嫁下女。」
こうして、ダーウインの進化論でも例のない、ひとり6役の属性を持つ新種人間が誕生した。