第八話
青く澄み渡って晴れた空が無機質に見守るグラウンド。実に整備が行き届いているのが一見してわかる。ここでは、神と馬女子は分かれている。
「は~い。全員集合。ここからは体育だよ。日頃から足腰は容赦なく鍛えられてるけど、これも教育だからね。」
ピンク色のジャージ姿の教師桃羅の大きな声に、反応はほとんどなし。
黄金の体操服にスパッツという神たちはつまらなさそうに突っ立っている。一方、馬女子たちは白い体操服にブルマ。安っぽい素材であることは言うまでもない。
馬女子たちは膝をくの字に曲げて落ち着かない様子である。なぜか胸元を白い腕で隠して顔を赤く染めている。丸まった馬女子の背中にゼッケンが貼ってあり、そこには大きく二文字が書かれている。巨馬、大馬、中馬、小馬、虚馬の五種類が確認できる。大半が小馬で、大と中がまばら、それ以外は数えるほどしか見られない。
隠された胸にもゼッケンがあり、こちらには、65から92までの番号が書かれている。番号の大半は72~80に収斂している。ちなみに教師桃羅は巨馬というゼッケンを威風堂々に広げて、東側に98の胸を張り出している。その方角には大悟がだるそうに立っていた。こちらはごく普通の白い体操服にハーフパンツという出で立ち。
「それじゃ、神様と女子はふたり一組で準備体操開始!お兄ちゃんは、モモとふたりきりでこのテントの中だよ。」
教師桃羅が指差した先には、体育祭用のテントを、ブルーシートで覆い隠した簡易構造テントがセッティングされていた。
「バカなことをするな!大相撲のやぐらみたいにしやがって。こんなところでいったい何をするんだ?」
「お兄ちゃん、完全理解してるね、満点!大相撲ナニわする場所だよ。安心して。土俵の代わりにマット運動できるようにしてある安心設計だよ。新婚専用として新品を敷いたよ。前転、側転できるよ。お兄ちゃんの大好きなこ・う・て・ん、も♥」
「ひらがなにするな!余計にエロくなるだろう!」
「エロ?よくわかってるね、お兄ちゃん。保健体育の筆記テストが得意なんだね。でも体育はからだを動かしてナンボだから、実技に入っちゃおうかな。脳内妄想シミュレーションを最大級に解放して、三次元キャンバスモモを極彩色で天高く造形してね。」
「オレは三次元プリンターか!」
教師桃羅と大悟がバカップル的に騒いでいるのをよそに、神と馬女子たちはふたり一組で、金色の小さなテントの中に入っていく。テントは組数分揃っているようだ。
『ビシバシッ』『あはん。おやめになってください!』
いろんな声が聞こえるが、テント内詳細は不明。