第三話
生徒の流血姿を見て、ダイコクはさらに興奮して、大きな足を蹴り上げて、天井を木っ端微塵にした。ダイコクは落ちてくるコンクリート屑を手に当てて楽しんでいた。
「ギャハハハ。これどす、これどす。朝シャワーは気持ちいいどす。このゴツゴツで心が洗われるどす。穫れたての血の香り、ねっとり感は癒やしの王様(キング)どす、略して嫌(イヤ)キンどす。」
「これこれ、大黒天。漢字変換も微妙に間違えとるし、相変わらずネーミングセンス欠如、ケツ女じゃ。福禄寿も生徒をいじめるでないぞ、かわいそうに。倒れそうな弱者に背中を貸すことが、年長者の務めじゃ。このババが助けてやるぞ。」
三番目にいた女子が自分の馬から降りて、大黒天の馬の傷を手当し、優しく血を拭いたりしている。よく見ると、その女子が着ているのはブレザーではなく、色は同じ黒だが、形はローブである。それも裾は短く、細い脚が露出している。顔はフードで隠れているが、鋭い眼光が収まっていることは外からでもわかる。
「コトブキちゃん、やっぱり年寄り臭いぃ。やっぱり名前の通り、寿老人だよぉ。自分で、ババって言ってるしぃ。自分を客観的に評価できるのは年の功だねぇ。それにそのローブ→老婆。プププ。」
先頭にいる福禄寿が、後ろを振り返りながら波目で笑っている。
「笑うでない!このババは、福禄寿たちのわずか1歳年上というだけではないか。現在の年齢は138億と1歳じゃ。これで年寄り扱いされるのは、我慢ならん。これを138億言い続けているのに、誰も歯牙にかけぬわ。これが神セブンの実態じゃ。そ、それに、福禄寿は、大黒天のパンツを散々見るのに、こ、このババのは・・・。チラリ。」
寿老人は、ローブの裾をわずかに震える指で軽くつまんだ。絶対領域が、老人とは思えない純白さを全世界にアピールした。
「しーん。」
福禄寿は静けさを、音声を通じて強く表現した。
「ふ、福禄寿のバカ~!おたんこなす!ドケチ~!チラ見ぐらいしろ~!」
寿老人は馬女子を引っ張って、教室に入っていった。
「あらら、やっちゃったぁ。コトブキちゃん、ツンデレだからねぇ。ツンデレは現代では必要悪。神も人間も本能を刺激するのがツンデレ。ツンデレって便利だよね。でも『便』って文字は『便利』と『排泄物』」の両方の意味があるから不思議だねぇ。ちなみに、「手紙、知らせ」の意味に使うのは、「たより」の訓による中国にはない日本独特の用法なんだよねぇ。また、『大小便』の『便』は、中国でも古くからある用法なんだけど、「便所」は和製漢語で、中国では「厠」と言うんだよねぇ。豆知識だよぉ。」