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第31話 四天王との約束(後編)

再び魔王城迎賓の間-

今度はアルスとセニアに促され、無理矢理俺が一番奥に座らされた。
アルスとセニアが俺の背後に控え、俺から見て左側にフレイム、ガイア、右側にアクアス、ゼファの順で座っている。

俺が非常に偉そうでとにかく嫌だ。
アクアスさん、そんなに睨むくらいなら席順であーだこーだ言ってる際に反対して下さい。なんなら座る位置変えませんか?

「おいガキ、俺はアルスちゃんとセニアくんは当然認めているが貴様の事は何一つ認m…ヒィィィイイイイ」

フレイムが俺に噛みつこうと悪態を付き始めた直後、背後に立つ為表情は確認できていないが、アクアとセニアが凄い怖い顔をしたのだろう。

「フレイム、何を勘違いしているのかわからないけど、私とセニアにとっての神に等しいお方を貴方は侮辱するのね?」

「あ、アクアちゃん違うんだよぉぉ、そうじゃないんだってば…」

フレイムよ、傾くなら傾き通して欲しい。

「旧友だろうと親族だろうと魔王様の敵は俺の明確な敵だ。今すぐ死ね。」

セニアは流石に言いすぎだと思う。
おらフレイムちゃん泣いてるだろうが…

「セニアさん、俺を庇ってくれたのは感謝しますが、少し言い過ぎですよ…」

「…申し訳ない魔王様。フレイムよ、魔王様が寛容で良かったな。死ななくても良い。」

あ、死ねは本気だったのか。
フレイムさん、俺のせいじゃないので俺を恨めしそうに見ないで下さい。


バンッ

それまで俺を睨むだけだったアクアスが机を両手で叩き立ち上がり、全員の視線を集める。


「貴方たち本気でこの『予言の子』とやらの魔王様を認めるつもりなの!?ホエイプロテインとかは確かにこの子の功績なのかもしれないけど、それ以外何もないじゃない?それで私たちの、いえ、魔族全体の未来を託すつもりなの!?」

「アクアス…それは違うわ。」

ここで自分がキレてしまったら収集が付かなくなることを理解しているのだろう。
俺への暴言とも取れる発言をするアクアスに対し、アルスが静かに反論する。

「まず第一に、今私とセニアの仕事量は1年前の3倍以上に達しているわ。働いている時間は昔の3割程度しかないのにね。」

一応曲がりなりにも領主を任されているアクアスである。
その変化には当然気が付いていた。

この一年間、明らかに陳情書への反応が異常に早くなった。
今までは陳情書を魔王城に送っても、可否に関わらず少なくても1か月以上反応が無かったのに対し、『予言の子』がアクアスの元を訪れてから少ししてからの話である。

余りの早さに対し確認していないのではないかと一瞬疑ったが、アルスとセニアの性格をしているアクアスはすぐにその疑念を振り払った。
しかしその疑念すら杞憂であったことにすぐ気付くことになる。

反応が早くなったことに気が付き2週間が経過すると、今度は陳情書の内容に対するアドバイスがついて来るようになった。

可決の場合はこちらの要望以上のものに、否決された場合は否決の理由とその代替え案が添えられて返答が届くようになった。

この件に関して、どういう関与の仕方かわからないが『予言の子』が無関係と考えるのは流石に無理があるだろう。

「働いている時間が少なくなったというの!?」

仕事の質が上がったのは気付いていたが、逆に働く時間が短くなったのは気付く由もなかった。
精々『予言の子』が手伝った程度にしか考えていなかった。

「ええ、圧倒的にね。」

「で、でもそれでも、それでも私は認められないわ!!」

『予言の子』を認めるタイミングを逸し、少し頑なになってしまっているアクアス。
もう本当は認めているのに切っ掛けを掴めないのだろう。

「アクアスよ、ちなみに俺とアルスは、ベンチプレスの記録を100年振りに更新している。魔王様考案の魔王ずぶーときゃんぷによってな。」

「!?」

驚愕の表情を浮かべるアクアス、と他の面子。ガイアは少し羨ましそう。

「でもそれだけじゃないわ。アクアス、私の肌を触ってみて………どうかしら?」

アルスに言われるままアルスの頬に触れるアクアス。

「す、凄くスベスベです///しっとりしてるし。」

「これも魔王様のおかげよ?」

誤解が生じる前に言っておくが食生活の改善効果による所です。

「な!?こ、これが魔王様のお情けだとでもいうの?」

冤罪が怖いので言い方に気を使ってくださいお願いします。
アクアスだけでなくゼファも羨ましそうにアルスの肌を見る。
ゼファも若い見た目だけど肌を気にしているんだな。







「俺からも少しいいですか?」

皆の視線が俺に集まる。
あの流れでアクアスが折れてしまっては、まるで俺がまるでアルスを手籠めにしたみたいになるので口を挟む。

「なんで、魔族の皆さんは凄く強いし優しいのに、自分のことが最優先になるんですか?」

皆じっと俺の質問を聞いているが誰も答えない。
今まで考えたこともないことなのだろう。

「えーと、俺の育った国では、全員って訳でもないし状況にもよるんですけど、人が困っていたら助けるんです。でも、皆さんは、皆さんの方が俺の育った国より優しい方が多いのに、余り助けようとしないように思うんです。なぜ……でしょうか?」

そこまで質問されて、ようやく自分なりの言葉を思いついたのかガイアが答える。

「我々は……『死』よりも誇りが傷つくことを恐れる…」

「それは、生きることよりも大切なことだと…?」

「少なくとも……私はそうだ…」

うんなるほどね。
確かにそれも考え方の一つではあるな。

「ガイアさんの考えはわかるんですがなぜその考え方を周りに、子供たちにすら押し付けるのですか?少なくても子供たちや、何かしらの理由があり手助けがないと生きられない方はどうすればいいでしょうか?」

「ぬっ………」

ごめんね、追い詰めている訳ではなく皆さんに自分たちで気付いて貰いたいんです。

「俺は、自分だけの力で育った訳ではありません。親や周囲の助けがあって少しずつ成長していきました。皆さんは自分たちの力だけで大きくなられたんですか?」

「「「「…………」」」」

「話を変えます。アルスとセニアはかっこ悪くて弱いですよね?」

ガタッ

「ふざけるなよ糞ガキぃ!」
「予言の子よ、失言を取り消しなさい。」
「私の見込み違いだったようだ、早く消え去れ」
「たった1年でアルスとセニアの何がわかるというのかな?」

全員超キレてる。うむ、それでいいんだ。

「そんなに怒れるのに、なんで誰もアルスとセニアを手助けしなかったんですか?なんでアルスとセニアにだけ負担を押し付けたのですか?僕は皆さんにアルスとセニアの為に怒る資格はないと思います。」

全員が再び黙る。怒りで震えているけど。

「言葉を選ばず言わせていただきます。それを分かっていながら手伝おうともしなかった貴方たちが一番弱くてずるい。」

「「「「!!」」」」

言い返したくても言い返せない四天王、まぁ事実だしね。

「魔族の国を変えるのは、アルスとセニア、それに四天王の皆さまが揃っている今がチャンスなんです。これだけの優秀な面子が揃う機会なんて奇跡ではないでしょうか?」

優秀なメンバーだし本当はみんな気付いてるだろう。
足りなかったのは切っ掛けだけだ。
俺はその切っ掛けに過ぎない。

「私一人では無理です、どうか手伝っていただけませんか?」

しばらくの沈黙の後、アルスとセニアが俺の前に移動する。
それに合わせ四天王たちがアルスとセニアの後ろにつく。

「我ら魔王軍幹部一同、全員が魔王様の剣となり盾となります。魔王様、我ら魔族をお導き下さい。」

アルスの言葉とともに全員が俺の前で片膝をつく。

あー一番悪い予想が的中してしまった。面倒臭い。

「俺の剣と盾ではなく、俺含め全員で魔族を守る剣と盾になりましょう。但し、死ぬことだけは許しません。ともに戦いましょう。」

「「「「「「はっ」」」」」」





場合によっては全部アルスとセニアに押し付けて参謀的な立ち位置に収まろうと思っていたけど無理だった。

仕方ない、もう少しだけ頑張ろう。

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