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18禁ゲームのクズ悪役貴族に転生してしまう

「ぐ、ぐるしい……っ!」

 気がつくと俺は、ベッドの上で女の子の首を絞めていた。

「はっ! ご、ごめんっ!」

 俺はとっさに、女の子の細い首から手を離す。

 いったい俺は何をして……? 

 ていうか、ここはどこなんだ?

 でっかい豪華なベッドに、高級そうな調度品が並ぶ部屋。
 まるでどこかの貴族の屋敷、のような。

「はあはあ……アルフォンス様、今日はこれでおしまいですか?」
「……?」

 アルフォンス?

 もしかしてそれって……

「俺は、アルフォンス・フォン・ヴァリエ、だったりしないよね?」
「……? そうですけど」

 マジかよ。

 転生、したのか……

 どうやら俺は、18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」の悪役貴族、アルフォンスに転生したらしい。

 で、今、俺(アルフォンス)がしていることは。

「その……今日の【窒息ゲーム】はおしまい、ですか?」

 窒息ゲーム——アルフォンスが大好きな、メイドいじめのことだ。

 お付きのメイド、リコの首を死ぬ限界まで締める。

 もしリコが生きてたら、金貨を1枚もらえる。

 死んでしまったら、次のメイド(犠牲者)を探す……性格最悪なゲームだ。

「おしまいだ」
「……本当に、おしまいですか?」

 リコが怯えた目で、俺を見つめる。

 相当、リコに酷いことをしてきたらしい。

 アルフォンスは、アルトリア王国の侯爵令息だ。

 ヴァリエ家は、古代から代々続く優秀な魔術師の家系。
 たしかゲームの設定では、魔法を使えるのは貴族だけであり、魔力の強さは血統によって決まるとされる。
 それゆえ、アルトリア王国は強烈な身分制社会であり、平民は貴族に絶対服従させられる。

 そんな世界の貴族に生まれたアルフォンスは、ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)を身につけるどころか、平民をイジメまくる最低最悪のクズ。

 容姿は豚のように太って醜くく、性格は傲慢・怠惰・陰険で、女の子を痛ぶるのが大好き。

 当然、ゲーム序盤で主人公にボコられる【ざまぁ対象】であり、プレイヤーをスカッとさせるためだけに存在するキャラクターだ。
 
 ゲーム中盤に入るところで、主人公にこれまでの悪事を暴かれ、断罪され王国を追放される。
 
「本当に、おしまいだ。もう二度と、こんなことしない」
「えっ?! それは本当——」
「本当だよ。今までごめん」

 ネットで「クズフォンス」と言われる奴だ。

 とりあえず、今までのことは謝っておこう。

「…………」

 呆然とした表情で、俺を見つめるリコ。

 信じられないと言った感じだ。

「アルフォンス様……頭でも打ちましたか?」

 ★

「さて……どうしようか?」

 俺はひとり、部屋の中で考える。

 今、アルフォンスは15歳だ。

 たしか原作では、16歳で魔法学園に入学する設定。

 つまり1年後に、アルフォンスは魔法学園で主人公と出会うわけだ。

 破滅を回避するには、主人公やヒロインと接触しないこと。

 学園編でアルフォンスは、平民の主人公をいじめまくり、ヒロインの幼馴染を犯そうとする。
 そこで主人公にボコこられて、破滅していくわけだ。

 だから、主人公を避けることが一番大事。

 あとは、もし追放されることになっても、生き残るために強くなることだ。

 冒険者になって、迷宮探索で稼いでいく。

「よし。決まった。明日から魔法の鍛錬だ」
 

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