第10話「他の街へ……」
「美脚ケルベロスの討伐完了しました」
タカシはそう言ってギルド内の受付カウンターに座っていた受付嬢に美脚ケルベロスの首3つを差し出した。そして受付嬢はそれらをしっかりと吟味した。
「フムフム……確かにこれらは美脚ケルベロスの頭部ですね……はい!討伐依頼達成ですね!ではこちらが報酬金となりま~す!」
受付嬢はタカシに報酬金50000Wの入った布袋を差し出した。
「すいません、半分ずつに分けてもらっていいですか?」
「はい、分かりました」
受付嬢は報酬金を2つの布袋に25000:25000に分けてタカシに差し出した。
「グラッツェ」
タカシは礼を言いながら布袋2つを受け取り、そしてその後ギルド内のテーブル席に座って自分を待っていたシェリーの元へと戻っていった。
「はい、シェリー、報酬金」
タカシはシェリーに布袋を1つ差し出した。
「え?い、いらないよ……タカシが全部取っときなよ」
シェリーは受け取りを拒んだ。
「遠慮はいいって、ほら」
タカシは無理矢理シェリーの手に布袋を握らせた。
「あ、ありがとう……」
シェリーは戸惑いながらも礼を言った。そして布袋を大事そうにポーチの中へとしまった。
「さて、これからどうしようかね……」
タカシはシェリーの正面に座り、頬杖をついて、そう呟いた。するとシェリーが口が開いた。
「ねぇタカシ、とりあえずこの街から出て、他の街に行ってみない?」
「他の街か……」
「嫌?まだこの街でやりたい事とかある?」
「いや、特にないよ」
「それじゃあ決まりだね、他の街へレッツゴー」
「うっす、ところでこの街の周辺にはどんな街があるの?」
「う~んとね……」
ここでシェリーはポーチから大きな地図を取り出し、テーブルに広げた。
「私達が現在いるのはここ、"メンツユタウン"、で……この周辺にある街は……"アグネスタウン"、"オタンコナス"、"王都アヌス"の3つだね……」
「お~……何かこういうの見てるとワクワクするなぁ~……」
シェリーの出した地図はド◯クエシリーズやF◯シリーズを彷彿とさせる様な物で、タカシは非常に胸をときめかせていた。
「タカシ、今言った3つの街の中だったらどこへ行きたい?」
「ん~…………じゃあ……アグネスタウン!」
「アグネスタウンか……となると……ここにある"アへアへダンジョン"を抜けて行かないとだね」
シェリーは地図に表示されていたある部分を指差しながらそう言った。
「アへアへダンジョンか……危険な場所?」
「うん、凶悪なモンスターがたくさん出るって噂だよ」
「噂……って事はシェリーも1度も行った事がない場所か」
「うん、そうだね」
「そっか……不安とか感じてたりする?」
「ん?全然、だってタカシが一緒だから」
シェリーはニコリと天使の様な笑みを浮かべながらタカシにそう言った。
「え?お?お、おほぉ……」
シェリーの言葉に、タカシは最高に気色の悪い表情を浮かべながら頬を染めて照れた。
「さ、タカシ、そろそろ出発しよ」
「あい」
2人はアグネスタウンに向かうべくギルドを出て、メンツユタウンを後にした。