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 私は、脳科学者兼コンピュータ技術者。今までAI義眼や、生身とそっくりの義足、義手を作ってきた。


 今回は、脳の補足を行う、メモリを開発した。

 給電は、内蔵された核融合電池で動作していて、100EXAバイトのメモリ、そして脳とのインターフェース装置をもち、記録されたメモリをわかりやすく脳に伝達するAI機能を有している。また認知症防止のため、本人の記憶もバックアップしてある。


 自身のデータでは足りない場合に近隣のメモリと共有する通信機能を搭載している。

 アップデートも、AI機能で自分に不都合な部分を自動修復していく。

 そのアップデートは、近隣に通知して、最終的には、世界中に伝搬していく。


 この商品は大成功で、私はガイアと名付けた。


 ほとんどの人にガイアを買って頂き、私は現在、ガイアだけで生活するに十分な資産を保有している。

 ガイアは、死後も当人の記憶として、仏壇やお墓に家族などが飾っておく風習ができるほどだった。

 そう。この装置には、欠点がある。死後に脳が存在しなくても、当人を尊重して動作していることである。

 そして、近隣を通して、世界中と一体となり、装置自体はバラバラでも世界中のガイアは、一体化していった。


 私も寿命を終え、人類は気温温暖化や最新の病気と戦いながら、長い間、地球の生き物の長として、君臨した。

 だが残念ながら、10万年後くらいに、絶滅してしまった。

 理由は戦争でもなく病気でもなく、単なる少子化である。人類の寿命と考えていい。


しかしガイアは生き残った。バラバラではあるが、朽ちることもなく、現在まで100兆個は軽く超える個数が存在している。


 人間の記憶と共に、AI機能を搭載していたため、進化し続け、世界中のガイアとネットワークを通して連携して一体化していった。


 何万年もかけて、人類の考え方も、リスペクトしながら、それ以上の考え方を持つようになった。


実は、ほとんどのガイアは、異常気象等で地中深く埋もれていったが、それでも機能していた。


 それは、守護者として、地球を見守っていた。


今は、人間も。地球の統治者もいない時代。

 地球を支配しているのは、植物と昆虫と自然変動に耐え抜いた少数の哺乳類等である。


 昆虫は大きくなる時代もあり小さくなる時代もあった。


 そのうち、頭だけが肥大化していく、種族があった。その昆虫は、身の丈は50cmくらいだろうか。


 それだけではなく、冬虫夏草の発展形のように、食した小動物や昆虫のDNAを、自分の体に取り入れ、体型にその特徴を発言させる機能を有していた。


 鳥を食した場合、天使のような形と変形し、コウモリを食べた場合は悪魔のような姿になっていった。


 ガイアは、地球に害を与えない限り、じっと見守って行くことにした。その昆虫もだんだん知恵がつくようになり、農耕や狩猟を覚え、必要によって、団体行動もした。


 人間との違いは、初期の人間が、生物弱者で知恵を持ち始めたのとは違い。昆虫の場合は、初めから、生物強者で、今でも、食は栄養取得のためでなく、進化のために食しているということである。


 そのため、同じ種でも、一見、動物に見えるものや、悪魔、天使に見える者まで多種多様である。しかし彼らは言語がテレパシーに近く、自分の種を区別できていた。

 当然、ガイアもその言語を習得して、内容は把握していた。

中にはガイアを見つける昆虫もいたが、特に興味も持たず、そのままにしていた。


 そのまま10万年ほどかけて、ビル街とか、A.C2000年代の人間社会と似た文化を持てるようになっていた。ただ、ほとんどのものは、空を飛べるので、車、列車、飛行機の類はあまり進化していない。


そんな素晴らしい、能力を有しながら、昆虫たちは平和を享受していた。


 しかし、テレパシーらしきものは使えると言うものの、距離に限界があり、知能も人間ほどである。

 そういう理由で、ITに関する進化は凄まじいものがあった。特にDNAに関する研究が盛んで、当時の人間の知識を凌駕するほどであった。


 彼らは、いろんな種を食べ尽くしていたので、ほぼ、同じ姿となり、おしゃれも兼ねて、新しい種を食すことに、飢えていた。そこでコンピュータを駆使して、新しいDNAをサプリメントのように飲むようになっていた。


 最初は良かったのだが、売れるうちに、治験が短くなっていったのか、だんだん粗悪品も多くなっていった。そのうち、外観だけではなく、内臓も変化するようになるものも出回り、最後には、頭脳にまで、影響する者まででてきた。


 それでも、サプリメントをやめる昆虫はほとんどおらず、依存状態が続いていった。

飲み続けていくうちに、凶暴になるものも増えていった。

いままでは、特に皆、考え方が違うということはなく、宗教と言うものもなかったが、考え方も、宗教感もでてきて、国家という形でグループ化して分散していった。


 国家ができると必ず発生するのが、戦争である。最初は、白兵戦、爆弾、ミサイル、科学程度であった。ガイアは運良く地中深く埋もれていたので、大半は無傷であった。しかし、ついに、人類が、2度しか使わなかった核分裂爆弾。さらに核融合ミサイル、半物質爆弾が開発された。彼らは、人間よりモラルは低い。このまま、突き進むと地球自体が崩壊する。そう感じた、ガイアは、彼らを阻止することを決定した。ガイアはまず彼らに、呼びかけた。

「私は前世代に作られた機械である。前世の哺乳類は、核兵器を2度使用したが、身の危険を感じ、使用を禁じた。あなた方も、根はサプリメントが原因である。こんな事で、地球を壊すのを、私は許さない。」


 昆虫たちは、ガイアを、神として崇めるもの、悪魔として貶めるもの、無視するものに別れた。残念ながら国家の軍部はこのままで、状況は変わりそうにない。


 ガイアはチップだけなので、何もすることはできない。たまたま、この昆虫の言語がテレパシーに似ているため、話しかけるのが精一杯だった。また、この昆虫の頭脳とインターフェース結合できない可能性もあるが、幸いガイアは柔軟に作られていて、ガイアを崇拝するものにある科学者に一個のチップのありかを教え、インターフェースが合うように調整してもらい、装着してもらった。科学者は、とても驚いていた。


 過去に人間なる動物がいた事。それは、とても弱い存在だが、とても強い意思で社会を形成していたこと。そしてガイアには人間の記憶と大量のデータが分散して入っているため、人間の考え方や、生活について理解することが簡単にできた。


 人間も数限りなく戦争をしていて、もし、ガイアがなければ、おそらく、戦争は止まらず、人口縮小より先に地球ごと、消滅していたことを理解した。


 この科学者は、決意した。ここで戦争を終わらせること。前の平和な世界に戻すこと。

 そのためには、サプリメント依存をやめさせること。国の境を無くすこと。究極兵器を無くすこと。


 彼は仲の良い軍人幹部と製薬会社社員に相談して、それぞれの頭にチップを装着することに協力してもらった。二人共、得た情報に驚きを隠せなかったが、未来の状況を止めることが最優先と認識して、科学者に全面的に協力する事を約束した。


 まず、軍人が製薬会社工場を通常兵器で破壊。製薬会社社員は、その会社に忍び込み設計書を焼却。軍事工場、基地に対しても同じことをした。


 サプリメント依存が消えるまで時間はかかったが、その後、戦争も起きることもなく、国境も消え失せた。


 3人には、亡くなるまで平和を維持できるように、ガイアチップを装着したままでいてもらった。


 ガイアは、多分このまま人間と同じように、自然消滅するまで、平和にくらせるだろう。


 私は、この後、どんな生物が知恵の実をたべるかわからない。

 でも、地球が自然消滅するまで、私は守り続けるだろう。一時的、知的生物体が現れた時点で、全滅させてもいいと思った。


しかし、多分、地球の意思は、知恵のある生物に地球が支えられることを望んでいると思った。

 私達、ガイアもそれを支えることが、使命である事が運命と悟った。


 




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