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虚言


 日も大分落ち。僕達はお母さん家の庭まで来ていた。

周辺を見渡し、誰もいない事と物静かな事に不気味さを感じていた。



「随分、静かね~」

 呑気に話すメリネだが、その声からは何だか警戒しているかの様に聞こえる。



「とりあえず中に入ろうぜ。この時間にあいつが外にいないって~言う事はよ。どっかに出かけてるかもな」



「そうだな」



 僕を先頭に玄関の前に立つとゆっくりと扉は開く。

中に入るが物音一つ聞こえなく、ただ薄気味悪い空気が漂うだけ。お母さんが居るとしたらリビング辺りだろうと思い。僕達は顔を合わせた後、警戒しながら向かう。





 リビングに着き中に入っていくと、そこには特に何もせず、ただ一点を見つめているオオハラさんが居た。

僕達はオオハラさんから妙な雰囲気を感じる。その時、誰かが唾を飲む音が聞こえた。それに気付いたのか分からないが、ゆっくりと顔を動かし僕達を見つめ、物静かな声が聞こえてくる。



「ああ、これはアルトリウスさん。帰って来ていたのですね」



 僕が言葉を返すよりも早くバレットがオオハラさんに近寄り、眉に力を入れ、睨むようにしながら質問する。



「おい、ローレさんはどこ行った?」



「....」

 特に何も答えずオオハラさんはバレットの顔を見つめ後、薄ら笑いを浮かべる。



「!?」

 バレットは何か焦った様子でオオハラさんの胸倉を片手で掴み、無理やり立たせる。

その勢いで椅子は倒れガタンっと床に接触し、大きな音が響く。

「てめぇ! まさか....」



「ちょっとバレット!?」



 僕が突然の出来事に戸惑っている中、メリネは今すぐにでも人を殴りそうなバレットを一目散に止めに行こうとする。その瞬間奥にあった扉が突然勢いよく開き、バンっと何んかの破裂音が響き、宙に何か舞う。



「いえ~い! アルちゃ~んお帰り~!!」



 元気な声が聞こえ、この不気味な空気が全て吹き飛んだ気がする。

どうやら奥から出てきたのは僕のお母さんだった。元気な姿を確認出来て僕は何だか肩の力が抜け、一つ深い息を吐いた後、静かになったバレットを見てみると頭にカラフルな紙が沢山乗っていた。

 オオハラさんもお母さんと同じ道具を持っていたらしく、それをバレットの頭の上で放ったぽい。

そんな姿を見ているとノエル、リールーの爆笑している声が聞こえてくる。メリネも呆気ない顔をしているでも何だか安心した感じもする。だけど、バレットだけは表情が変わらず投げやりにオオハラさんの胸倉を離し、倒れた椅子を元に戻すとその椅子に座り始める。



 そんな不機嫌なバレットを見てお母さんは自分が何か不味い事をしたのか不安な顔をし、僕達を見渡す。

「あら..私何か悪いことでもしたかしら?」



「いや、何でもないよお母さん。バレットはただ、嬉しくて、照れ隠ししてるだけだから..」



「そおぉ~? ならいいんだけど!」

 軽い笑みをお母さんは僕達に向け、僕達も答える様に笑みを浮かべる。



(..僕達のやるべき事はまだ終わってない)

 そう思い、僕は行動に移す。

「ノエル、新しく開発した料理をお母さんに教えたいって言ってたよね?」



「うん! ローレ! ちょ~美味し料理発見したの!」



「あら、それは是非とも教えて貰えたいは」



「よし! じゃあ早速行こ!」

 ローレのもとに行き、ノエルは車椅子を押し奥の扉を開くと同時に僕達の方を見て軽く頷き、姿が見えなくなり、最後に二人の声が聞こえてくる。

「ローレめっちゃ難しいから! 覚悟しといてよ~!」



「はい~はい」





 その場には五人が残り、また静かな時間が訪れる。



「とりあえず座ろうか」



 僕がそう言うとリールーが魔法を使い、対面になるように椅子を並べた。バレットは座ったまま移動され、ちょっと具合悪そうになっていた。

 オオハラさんに位置を教えようとした時、オオハラさんはすんなり対面の一つだけの椅子に座っり、僕達の何かを大人しく待っている様だった。まさか自分から一つだけの椅子に座ると思わなかったので少し驚いていると。



「アルも座りな~」



 メリネの声が聞こえ、僕とリールー以外座っている事に気付き、僕はバレットとメリネの中間の椅子に座る。

 空いている椅子はもう無くリールは立ったままで懐から折り畳み式の杖を出した。ボタンを押すと杖は一瞬んで伸び、リールーは杖の先端で宙に小さい円を描く様に動かす。一連の行動が終わるとリールーはメガネをクイッっと上げた後オオハラをまじまじっと見る。

 僕はリールーの準備が終わる事を目視し、一瞬瞳を閉じ、覚悟を決め、オオハラさんの瞳を見る。



「オオハラさん、急な出来事で驚かしてしまいごめんなさい」



「いえいえ、大丈夫ですよ」



「そうですか。....それじゃあ早速ですが質問しても良いですか?」

(..なぜこんなにあっさりしている? おかしい..やっぱりオオハラさんは....)



「ええどうぞ」



「..まず一つ、オオハラさんはサンタンジェロ城に入った事はありますか?」

 この質問をした時、バレットはなんだその質問は? みたいな感じの雰囲気を出していたが、特に何も言わなかったのですんなりオオハラさんが答える。



「ああ、あのお城ですか。いえ、外見だけしか見たことは無いですね。一度中に入ってみたいものです」



「そうですか」

 僕はバレない程度に横目でリールーの顔色を窺うかがい問題は無く、少し安堵した後次の質問に移る。

「二つ、オオハラさんは貴方はメムロ村に行った事はありますか?」

 空気が冷たくなる様な感じがした。



「....ええ、あります」



 メリネとバレットが眉を上げ、緊張感が高まる。



「メムロ村にはいつぐらいに行きましたか?」



「そうですね。自分自身こっちに来てから日にちの感覚がズレてまして、あんまり細かく言えませんが大体一ヶ月ぐらいでしょうか?」



「なるほど..」

(..次の質問はどうするか。..やっぱり、今僕が気になる質問をしてみたい。確信に繋がるかは別として..)

「三つ、貴方は何処から来たのですか?」



 鼻で大きく息を吸う音が聞こえる。そして覇気のある声が聞こえてくる。

「......海です」



「は?」



「え?」



 バレットとメリネのそれぞれの疑問と疑惑の声が聞こえ、二人は戸惑いを隠せていなかった。僕は横目でリールーを見るが特に反応は無い。オオハラさんに海について説明する事にした。



「オオハラさん、知っていますか? 海は向こうは濃い霧と荒れた嵐により、誰も越えられない場所になります。今まで二人向こうに行こうとした者がいましたが、一人は一年中荒れた嵐の中彷徨い、何も無い事が分かり帰還しましたが。もう一人は帰って来なかったっと言う歴史があります」



「もちろん知ってますよ。ただ自分の場合は目指して来たわけではありません。旅行の途中で船が沈没してしまい、遭難し、気を失ってしまいました。自分は死んだっと思いました。ですが目が覚めると陸に上がっていたのです」



「バカにしてんのか! 気を失って、たまたまここに着いただと!?  あの嵐の中を? バカげてる..」

 怒りに満ち溢れたバレットがテーブルを叩き、オオハラさんを睨む。



「私も同意見だよバレット。それにアンタがこことは別の場所から来たのなら、なぜここの国の言葉をスラスラ話せる? 万国共通なのかい? 私達は違ったけどね」

 メリネの呆れ、冷たい顔がオオハラさん襲う。



 僕も皆と同意見だった。僕はオオハラさんを問い詰める。

「どうなんですか? オオハラさん」



 オオハラさんを見た時、僕とオオハラさんの関係は短い間だったけど、こんな酷い笑顔を見たこと無かった。いや、人生で初めて見る笑顔だったかも知れない..。笑顔を隠そうとするが、隠しきれずしばらくオオハラさんの体は小刻みに揺れている。僕達はその行動に恐怖した。この時のオオハラさんは彼女よりも怖かった。



「クック....あ~失礼、何も面白く無いのにツボってしまいました」

 まだ口角は若干上がっているが、スッキリした顔をしていた。



「いえ..大丈夫です..」

 僕達が顔をひきつっているとオオハラさんは質問に答え始める。



「そうですよね。確かに....。ですが、自分は覚えたのですよ」



「覚えた!? 一体どうやって....?」

 メリネの驚いている声が聞こえる。



「本ですよ....。三代目のね」

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