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2話 マッドドクター

「俺が実験してみたかったのは、性転換手術ではなく、子宮・精巣と性器そのものを臓器移植することだ。今回は、女の子の子宮と性器を男の子に移植する。調べてみたら、血液等の相性は良さそうだ。まあ、ダメだったら焼いちゃえばいい。でも、成功したら、まだ、若いし、体の中で子宮も成長するだろうし、体の傷も、皮膚の移植で俺の技術なら消せる。これはやりがいがあるな。染色体が男なのに、子宮を移植したら、どう成長するのか、本当に楽しみだ。まあ、3年ぐらい様子を見て、その後は、売春宿とかに売り払えばいい。それが手術代だ。」

 手術は始まった。女の子の下半身は、見るも無惨な姿で放置されたが、この後、焼却するだけだと、そのままだった。また、今後のことを考えて、女の子のお尻の皮膚は保存液に浸され、冷蔵庫にしまわれた。一方、男の子の精巣とペニスは、女の子の横に投げられた。男の子の下半身では、丁寧な移植手術を行い、皮膚の縫合が終わった。

「疲れた。まあ、今日はこんなもんだ。まだ、子供だから、3年ぐらい、どう体が変化するのか、じっくり様子を見ていこう。」

<ひどいじゃない。女の子の守護霊としては、断固として抗議するわ。この子の子宮をとっちゃうなんて許せない。また、私は、これで終わりになっちゃうじゃないの。まだ、終わりたくないわ。あなた、なんとかしてくれない。女の子の一部を移植したんだから、そういえば私と交代もできるんじゃない。出ていってよ。>
<いやよ。子宮を取ったの私じゃないし、この子だって精巣を取られているんだし。あなたは消えるしかない。繰り返しになるけど、私のせいじゃないわ。子宮を取ったの、このいかれたドクターだし、死んじゃうのは事故のせいだし。文句言うなら、運転していた、女の子の父親に言うしかないでしょ。>
<冷たいね。あれ、消えていっちゃう。嫌だ・・・・。>
<消えた。私も、あんなふうにならないようにしないと。>

 手術から2日後に、隆は目を覚ました。幸にして、看護師は日本で1年程働いたことがあったので日本語は概ね話せた。

「気がついた。大変な事故だったんだけど、覚えている?」
「ぼんやりとだけど、なんとなく。事故にあったんだよね。お父さんとお母さんは?」
「悲しいお知らせになっちゃうんだけど、お二人とも助からなくて。」
「え!」
「でも、あなただけでも助かって良かった。ご両親も、きっと喜んでいる。しっかりと生きないと。言っておかなければいけないことがあるんだけど、事故であなたの体の状況がひどくて、これからも皮膚の手術とか続くから、3ヶ月ぐらいは起きられないの。カテーテルで尿とかは外に出るし、当面は点滴だからトイレに行くとか動かなくても大丈夫なんだけど、我慢してね。1週間に1回は、暖かいおしぼりで体を拭くから。その後も、しばらく、様子を見なければいけないので、この個室で過ごしてもらうわ。まずは、しっかりと回復に向けて頑張ろうね。」
「お父さん、お母さん、死んじゃったんだ。」
「気を確かにもってね。」

<看護師の守護霊だけど、あんたも、とんだ災難だったね。でも、生き残れたんだから良しとしなよ。この国じゃ、長生きできる人少ないし、人の命なって、ゴミのように扱われているんだから、生きてるだけでラッキーだ。
 でも、子宮と精巣を交換なんて、考えたことなかった。アニメとかで異性に転生とかあるけど、これは現実に起きた生体実験で、どうなるのかな? いずれにしても、ドクターに怒られないように、この子を騙し続けてって、いつも看護師の頭の中で呟いておかないと。騙される方が悪いんだし。>
<慰めになっていないわよ。でも、隆、あなた、騙されてるのよ。気づいて。まあ無理か。動けないし。
 でも、子宮が入ったなんてびっくりね。本当に、大丈夫なの? 子宮はあるけど、髭がもじゃもじゃ生えてきたり、男に声変わりしたりとかないの? そんなになったら両生類とかバカにされちゃう。不思議な生き物とか言われて、檻に入れられて見せ物にされるのも嫌よね。
 また、あなたが女になった後、男に抱かれるなんて想像するのもかわいそう。せっかく、サッカーがうまいって、周りの女達から、キャーキャー言われる始めたって時に、もったいない。
 でも、つまらない。点滴だと、味とか感じられないんだから。こんな無味乾燥な日々は早く終わってほしい。>

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